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ヒッチハイクして攀じ登ったトラックの荷台には、皮をむかれた赤白ヤギと生理用ナプキンとが満載で、乾いた寒風越しに眺めるチョモランマやシシャパンマの巨峰群が茶色い台地の上に白く美しかった。
標高5,000ｍ級のチベット高原から1,400ｍのカトマンズ盆地へ急降下するや、濃厚な空気と人の気配を感じた。
乾燥したチベットから遥々やって来たカトマンズは、如何にも豊かに見えた。
清潔な安宿に投宿し、ズブズブと惰眠を貪り疲れを取った(癒さない)。
仕事でヒマラヤ越えの鶴を撮影に来ているという噂のパイセンヨネヤマ氏とは折悪しく会えず。まあいい、食欲をタップリと満たし、次は音欲を満たそう。
劣悪環境の中国では、食事にも飢えたが等しく音楽にも飢えた。
日本の様にジャズ喫茶はあるまいが、ジャズバー位はあるだろう。何せここはバックパッカーの聖地なのだ。
埃っぽい狭い路地を徘徊していると、真昼間から素晴らしく煌びやかな音楽が聞こえてきた。紛うことなきジャズの音だ。アルトサックスのライブなのか？
吊り込まれるように階上の店舗に入るや、薄暗い空間に男が一人。
古く冴えないスピーカーから、大音量で耳を劈くばかりのアルト音がそれこそ唾を掛けるが如くに噴出している。
店番らしき兄さんにこれは誰の音楽なのかと尋ねるや、コンポの停止ボタンを押して取り出して見せたのが何とカセットテープ！ それが収まっていたカセットのジャケットを見て更に驚いた。情報としては知ってはいたけど聴いたことのなかった、噂のあのディスクだった。
◆Jazz at the pawnshop/Arne Domnerus(as)
何でも、日本での情報ではハードを選ばない、向かうところ敵無しの最上級の音質を誇るディスクで、オーディオ店には高音質チェック用にこのレコードCDが常備してあるという話もある。
何でこんな場所で？ スウェーデン製ですよ、これ。う〜む、流石は聖地だけある。
ビール注文して、腰を据えて傾聴する。むむむ、噂以上のサウンドにビールがややや止まらない。ライブ盤だけあって雰囲気もあり出だしの�，�らしてもう最高。
ドムネラス、アルトも良いけどクラもエエ。
すっかりとイイ気分になって窓際の席から階下を眺めると、この店から漏れ出る音を腕組みして立ち聴きしている東洋人を発見、よく見ると「んんっ？」見たことのある顔だぁよ。向こうもこっちを見上げて「ああっ！」
探検部時代のパイセンサワダ氏ぢゃあないですか！
「こんなとこで何やってんの」から始まり、再会を祝して乾杯しお互いの話が始まった。チームハチヨンでダウラギリ�喫�(8,167m)に登りに来てサミッターになったものの、同行者の遭難もあって大変な遠征だった、とのこと。サワダ氏は、私がジャズを聴くきっかけを作ってくれたパイセンノビタ氏の影響でジャズも聴き(ノビサワ両氏はかつて青年倶楽部というボロ一軒家に同居していて、ここは七帝柔道記に登場する「深マン」の傍でもあった)、街を歩いていたらジャズが聴こえてきて吸い寄せられるようにこの場に来た、と言う。一体、何の縁だろうか？ サワダ氏はこの後も魔の山ナンガパルバット(8,126m)にも登頂し、チョモランマ(8,848m)には何と有給で登頂を果たすという強運ぶりを発揮した。
カトマンドゥーを去る間際、兄さんにお金渡してカセットコピーをお願いして入手、さらに西へ。
インドで購入のウォークマンで、イランの砂漠の町で星空の下聴いた「Take Five」最高だったナ。
今を遡ること20年と4月前の話でした。
追記� ┐修凌瑤�月後の西へ西へのロンドンの中古レコード屋で、首尾よく元ネタのカセットも入手して21世紀の今でも時折車中聴いている。
追記�◆┐修慮紊�2003年末台湾遡行に赴いた際に、同行氏の林(リン)さんが泊めてくれたマンションでやおらこのCDを掛けた時には心底ビックラコイタ。そう有名盤でもないはずなのですが。
macchan90さん、こんばんわ。
２０年前。。というとニアミスしてるかも。
確か８７年の夏だったですが。。
私の乗ったトラックは中国製の靴だらけでした(笑)
カトマンズも大地震以降随分と様変わりしたようで、
ちょっと気になるところです。
k-yamane様、おはようございます。
87年夏だと30年前ぢゃあないですか。
中国製の靴、色まで目に浮かびます。
そうですね、今日日はカトマンズ≒地震というイメージです。あの猥雑な街が、好ましい復興を遂げることを祈念します。
96年の秋だね。カトマンズは、よく人に会うんだ。新宿や渋谷じゃ絶対会わないけれどね。
僕もこの秋、カトマンズで何人かに偶然あった。山関係ばかりだけれど。会えなくて残念でした。
86年の夏は、ポカラ行きのバスの中で寮生にあったよ。なんでお前がここに？と言い合いました。
ドムネラス号のドムネラスは、これだったのね。きのう、16年ぶりに中学の同級生を訪ねて、彼の車に乗ったら当時のカセットがあって、ヒョエェ〜と思った。イーグルスやRCサクセションだったけど。カセットって案外長持ちするんだなあ。
yoneyama様
この話は1995年11月のことです。
ノビタ氏にダビングさせて貰った1990年カセット、未だに聴けます。ただ、デッキの「当たり」が悪いと一発で”持って行かれ”〼。
海外で寮生に会う、っていうのはなぜかよく聞く話です。イシザキの野郎からも、同様の話を聞いたことがある。
再会と言えば、この旅の出だし(1995秋)の上海行フェリーで乗り合わせた同年ナニワのK君と、地球一周後帰国して再度出国し沖縄から船で渡った台湾台北のバスターミナルでバッタリと言うのがあったり(1996秋)、その流れで訪れた返還前の香港でラサで同宿した会社員とハローアゲンな出来事もありました。
当時50億以上の人間が地球上に居たことを思うと凄い確率とも思えますが、必然の糸が手繰り寄せた出来事とも思えます。旅をして、同じ地点に戻って来られることすら奇跡的にも思えるけれど、そんなこたぁシャケでもできる。
そうだった95年の秋だった。
確認取れるところが流石デス。
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