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今回のその日は満月を翌日に控え、娘�△猟未ν鎮娜爐了猷搬欧�集って弔い+観月+火遊び+木遊びを粛々と執り行った。
まあ単に、我が家が偶に行う河原での焚き火に興味を持たれた幼稚園ママ友が子等を連れてソーセージマシュマロ串焼きを食べに来て、月が昇って木を切っただけとも言える。
あらかじめ段取りしておいた薪やパレットを豪気に炎上させ、子供達には些か刺激が強く興奮も過ぎた様子で、放っておいても周囲の枯木を鋸で伐りまくりまた木登りにも興じ、そんな中で十四日月がポッカリ浮かんだ。
酒飲んで火を大きくするや「凄いです、こんなの初めてで子供達も喜んでいます」と某ママに言われると満更でもないのだが内心「でも、これ如きでは荼毘に付すことも叶わない」とも思ってしまう。
献杯の酔いに任せてあれやこれやと思う。
山岳部先輩に当たるババさんが1823ｍ峰南面直登沢で遭難死し、沢中で荼毘に付された時には死亡診断書はどうしたんだろう？ あ、医学部OBの越前谷さんか下沢さんかが同行されて作成したのか。写真に写るその荼毘の風景の中心に、大きな火が焚かれていた。
ウルタル�曲�でスーパーアルパインクライミングにて初登頂を為した直後に胃穿孔で急逝した日本山岳会東海支部の故山崎彰人氏が現地にて荼毘に付された際や、パキスタンのクンヤンチッシュ峰で遭難されたサンナビキ同人隊(羆の会だったか？)道産子某美男氏の場合は、当地では大変な貴重品である木材を苦労の上で集荷して遺体を燃やして遺灰はインダス川に流した話があったのを思い出したり。
ヒトを焼いたニオイを、インドのバラナシで嗅いだことがあるはずなのだが、一向思い出すことが出来ない。香ばしかったか？
もしも我が母を、自らの手で火葬していたら。
ただ、これ如きの火では大の大人の遺体は焼けまい。
母の思い出もダラダラ書くのは止めにしてこれを仕舞いとしたい。
母のお骨上げ(火葬)は実に早く一時間も掛からなかった。義姉の巨体ですらあの早さだ、あれだけ小さな身体だっただけに最後の最期まで手間を取らせない潔さだった。友引当日未明に亡くなるというのも段取る我々にしてみたら出来過ぎで、事は如何にもスンナリ運んだ。
以前書いた日記にも登場頂いた看護師・ナツバアキ氏の兄のヨッチャンの自転車に遅れまいと懸命に漕いで脇目も振らず飛び出した交差点で、映画「ウェイクアップネッド」の婆サマの様に車に撥ね飛ばされた挙句、ほぼ無傷という我が強運さは既に小学三年から始まっていた。
死んでいても文句は言えなかった。
3度目の救急車で運ばれた佐藤外科から即日退院し、タクシーで帰る知恵も無く迎えに来た母の背に負われて帰途見上げた夕焼け空を、鮮明に思い出せた。
母の背中の温かさと、柔らかなその匂い。
不遜な物言いになるが、癌告知から死に至るまでの八ヶ月と一週、母との濃密な係わりは私にとって極めて充実した期間であり得難い体験だった。
こんなにも急な別れの宣告を一時憎みもしたがこれも定めだ、一度嘆き悲しんだらあとは腹括って看護に向えた。そのタフネスさは登山から得たものであったしまた、細かな配慮は林業の世界で常に厳しく時に愛持てビシバシ指導呉れた社長や親方のキヨッさに依るところ大だった。段取り八分の世界でやってきたことが、看護で実に役立ったしまた、アレが無くては母もきっと充足しなかったことだったろう。それまで会社には腹を立てたことも多かったが、今となっては感謝している。
母という人は何をするにも口出しせず、黙って私を見守ってくれた。遠い大学にも、危ない冬山にも、不案内な海外旅行にも、３K仕事にも、そして結婚にも。中々できることではなく、見習いたいものである。
納棺されたその死を感じさせない清らかな姿を見て、メス入れず放射線治療も回避する判断で死を迎え入れたことは良かったのだと思えた。
あなたはこれを、良き人生だったと言ってくれるか。
あなたとのこれまで、わたしには過ぎた人生でした。
ジャズピアニストのソニー・クラーク【Sonny Clark】が急逝した際、ビル・エバンスが彼の死に際し追悼曲"NYC'S NO LARK"(ニューヨークよりヒバリ去る)を作曲した。『NYC'S NO LARK』はSonny Clarkの美しいアナグラムになっている。ニューヨークのヒバリはソニー・クラークのこと。
●アナグラム(anagram)；単語または文の中の文字をいくつか入れ替えることによって、全く別の意味にさせる言葉遊び
亡き母を 来ずらば待つか 孤高の峰
