ご本人一押しの上、これまでの角幡本の「読ませ力」からして面白くないわけなかろう本だったので、読むのを惜しんで二月以降取り置いてあった。
先々週、高賀六社三山の打ち合わせでお会いした石氏から極地圏関連の集まりでこの本が話題になったと聞きまた、先日私が末席を汚す某メーリングリスト上でもその紹介文が回覧されまた、某雑誌変酋長からも感想を問われて、いよいよそのタイミングがやってきたのだと思い着手、読了した。
尚、本書を読むに当たって3月初旬に実践した満月山行が多少なりその闇の解釈に役立ったことを付記しておく。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1393285.html
本旅は「『空白の五マイル』とは異なる、地理的探検の世界を突き抜けた異次元の脱システム的世界を舞台としており(角幡氏ブログより)」、それが成功していると感じられるかどうかが評価の分岐点のようだ。地理的探検にはなく、目的地を「北極海」とだけ定めて彷徨した旅の記録であるが、逆に言えば目的地に到達することは無くとも当初の目標は達成されるというレトリックも用意されていた。
極夜に向かう日々のその深い闇の中(六分儀を失った上)で、過去の踏査から多少なりの土地感があるにしても、25万図とコンパスのみで読図して進路を決して進んでいくその不安は想像の域を出ないけれどそれはそれは大きなものだったに違いない。GPSをよすがに山を歩いている人間には理解不能の域だろう、今の時代なら「そんなことしちゃダメぇ!」と声高に叫ぶママも居るだろう(この旅では衛星電話は携行【P.270】したもののGPSは置いて出掛けている【P.71】)。
尚、衛星電話携行に関してはこれが服部ブンショウ氏だったら大いなる叩き叩かれ所になるはずだが、角幡氏に対してはこの点を叩く人間が多く居ない点が両氏の世間での受け入れられ方の差異である。今回については熟慮の上で本人が判断してのことだからまぁ良いと思う。デポ依存もあった【P.59】が、こういう場でそれをつい「甘いっ」と書いちゃう人種を、私は信じない。
六分儀紛失でもあわや、と思うに十分だがその上デポ食料も、保険の英国デポまでも白熊らしきに食い荒らされ、兎も麝香牛も「兎に角」獲れず、真綿で首を絞めつけられるが如きの生還劇は、読んでいるこちらが息苦しさを覚えた。
この本の核心の一つは【P.223】からの「光による物事の認識」に関する考察だろう。加えて「闇への恐怖の認識【P.138】」も。
【P.264】の哀感、また木綿鴨、カニバリズム、他者依存と人犬関係の考察【P.249〜】、今旅の出産に始まる光の意味解釈【P.305〜】と、読み所は多くあった。
やはり本書も過去のものと同様に、読者を引き付ける構成が上手くまたしても「読まされて」しまった。
「美しすぎる八戸市議」「クラブOのA」「麝香石」等、品の無い笑地雷も仕掛けてあり、この点も角幡本が単なるノンフィクションに「堕していない」重要なポイントであろう。
最近刊行されたという「新・冒険論」も遠からず読みたい。
先日、NHKで極夜行がテレビ放映されてたので、ちらっと見てはいたんですが、このmacchan90さんの日記を読んで、その本、読んでみたくなってまいました。
パウットン様
ええっ、"情報原人"の私は知りませんでした、、、テレビ無いので。それは観たかった。
角幡本はどれを読んでも面白いので極夜行に限らずお薦めスマス。
ぱうっとん でございます。近頃、「ぱうっとん」と呼ばれることはないため、恥ずかしいような、恥ずかしいような…。
http://www4.nhk.or.jp/etv21c/x/2018-04-07/31/21229/2259614/
↑番組HPでございます。Youtubeに ころがってるといいっすねw
大昔の全国沢屋集会(茂木さん主催のやつ)に彼が来られてたことがあり、一言二言 話したことがあり、その時は「エ●いオッサンやなぁ」というくらいの印象しかなかったんですが
その後、あっちやこっちや行かれたり、本も出しはったり、結婚して お子さんも居たり、と、ほんまスゴイなぁと思います。が、まだ本は読んだことなかったので、図書館で借りて読んでみます
情報提供ありがとうございます。
いや、そこは借りずに買ったって下さい。
角氏が来た頃お越しなら、私も会場で同席していることになります。
ロクスノ次号の書評でこの本と新冒険論頼まれていたので、自分で読んで書くまでは松のここ、読まずに書き終え、今日読んだ。一点確認したいのだけど、20万図だったっけ。書評原稿で100万分の一と書いてしまったんだけど、どこに書いてあったか見つからなくて。
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