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2016年01月09日 20:21読書 書評全体に公開

【書評】インド・ヒマラヤ(ナカニシヤ出版)

インドヒマラヤの登攀史をまとめ、2015年現在までの画期的な登攀記録などを集めた、記録集大成です。1936立教大ナンダコートから、1974JACナンダデヴィ縦走、ピオレドール賞を受賞した2008カランカ北壁登攀(一村文隆、佐藤祐介、天野和明)、カメット南東壁登攀(平出和也、谷口けい(遺稿))始め日本人記録を中心に。2014年学習院大山岳部のギャルモ・カンリ初登記は翌年八ヶ岳で遭難死した吉田修平氏の遺稿となりました。
インドヒマラヤの有名ピークといえば、ナンダデヴィ、古いところではシニオルチューでしょうか。8000m峰の並ぶネパールヒマラヤと、パキスタン領になるカラコルムに挟まれてしまって、ティルマンが1930年代に初登したナンダデヴィ以外は、すこぶる地味な印象でした。深田久弥が紹介するヒマラヤ探検記録などの古典は戦前期のものが中心でしたが、当時ネパールが鎖国で入れず、西欧の探検家が調べたのがガルワール、アッサム、シッキムだったからでしょうか。1980年代までは、8000なのか、7000なのかと、何より標高重視で山を見ていた覚えがあります。それだけにインドヒマラヤは地味でした。

しかし、90年代以降は登攀技術の革新があり、難しい6000m峰の未踏峰がたっぷりあるインドヒマラヤに、また難しくない未踏峰も多く残されていて、若い遠征隊にも狙える山域として流行ってきた、という記憶があります。

この時期、最後の高峰ナムチャバルワ7843mをめぐる両者の確執もあったと聞きますが、ヒマラヤに登山隊を送り出す主体としては日本山岳会は衰えを見せはじめていて、東部カラコルムなど、まだまだ未知だった山域に精力的に通っていたのは日本ヒマラヤ協会HAJの面々だったように記憶しています。でもこの本を読むとJAC東海も90年代はインドヒマラヤに通っていたのを知りました。この本も日本山岳会110周年記念出版とのことですが、2015年の今、ようやく、日本の登山界が、JACだのHAJだのと言わず、皆の成果としてこの一冊を出すことができてよかったなあと思うところです。記録はもちろん日本人のものを厚く載せていますが、インドヒマラヤ登山全体に占める質量ともに、日本の登山家の割合は相当多くを占めると思います。やはり日本は登山大国だと思います。北大関連ではワンゲルの1980ゼット・ワン(Z1)、山岳部の1997ドーダなど、若手が自力で達成した山行記録が載せてあります。

インドヒマラヤといえばガルワールのメルー中央峰の最難ルート、シャークスフィンを2012年に登ったナショナルジオグラフィックの山岳カメラマンJimmy Chinがドキュメンタリ映画を撮ったそうで、今年日本でも劇場公開されるらしいですよ。昨年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞したそうです。
http://events.nationalgeographic.com/speakers/2015/12/01/making-meru-dc/
最後に少し要望を書くと、もう少し充実した地図を期待していましたが、少ししょぼかったです。でも、良い本を出していただきました。

日本山岳会創立110周年記念
ナカニシヤ出版2015.12
6000圓
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コメント

RE: 【書評】インド・ヒマラヤ(ナカニシヤ出版)
yoneyamaさん  はじめまして
 
インドヒマラヤの書評に反応してしまいました
僕は1980年メルー遠征隊に参加しおりまして
当時の事を思い出してしまい、懐かしくてコメントをしました。
当時はまだ未熟者で(未だに未熟です)、
高山病にヤラれてまともな登山が出来なく
悔しいおもいをしました
その悔しさがまだ心に引っ掛っており、
60過ぎて癌を患いながらもまだ、現役を止められずにいます

ヨネヤマさん、インドヒマラヤをご紹介くださり有難うございました。
映画是非見たいとおもいます。
2016/1/10 0:24
ヒガエリさんRE: 【書評】インド・ヒマラヤ(ナカニシヤ出版)
1980年メルー遠征隊、5ページにわたり報告書の抜粋がありました。僕も1987年にパミールで、一人だけ肺水腫で置いていかれ、他全員登頂という憂き目に遭っていて、それがその後の高所登山や、国内での長い山人生へのバネになった気がします。早めに絶頂を極めないのもまた人生かもしれません。でも当時のヒマラヤ遠征隊員となると、今で言えば日本代表選手並みの期待を少なくとも周囲からはされ、相当凹んだ青春と思います。昔は、「試合を楽しんできま〜す」なんて選手が言えるようなニッポンじゃなかったですよね。
メルーの映画、ぜひご覧ください。20世紀のクライミングは、サーカスみたいなルートです。メルーは、須弥山=スメールが語源だそうですね。
2016/1/10 7:46
Re: ヒガエリさんRE: 【書評】インド・ヒマラヤ(ナカニシヤ...
仰るとおりです
日本代表選手並の期待をされ、壮行会だけでも、山岳会、会社、親戚、同級生、有志、等々飲み会続きで往く前に疲れてる様な有様でした
食当でした(しか出来なかった)ので1ヶ月分のメニューを作成して、調達
梱包、英語でリスト作成、インドまで船便で送る、3ヶ月位深夜まで奮闘
してました
ですからロクなトレーニングも出来ずに本番に臨み、現地では連日の荷揚げ
とルート工作、並体の力では持ちません
帰ってくれば、町長,市長、に挨拶、新聞社の取材、NHK出演、報告会等々
慣れないことばかりで肉体的にも精神的にも疲れ果ててしまい
それから暫くは山を遠ざかってしまいました。
今になってやり残した気持ちが強くなり、暇さえあれば近くの山に行ってます。
2016/1/10 14:07
Re[2]: ヒガエリさんRE: 【書評】インド・ヒマラヤ(ナカニシヤ...
ヒガエリさん
1980年当時は、ガイド登山もツアー会社もなく、雑事交渉事務、全部自前でしたね。確かにそれで体力を使いましたが、全部お任せの21世紀登山時代からあらためて見ると、確かに実になる経験ではなかったかと思いますよ。ちょっとした企業経営だとよく言われましたね。飲み会と挨拶は御免ですけど。
2016/1/11 7:48
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