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松本の郷土本の固め打ちです。どれも身近な現場の驚きの感激を含むマンネリ感なき秀作でした。とくに図版が豊富で見ていて楽しい。こんな本を作る人達が同時代にいて、うれしい。「遊牧民」は偏見的視点の歴史観にいかに我々がハマってきたかを知る啓蒙書。著者の作を続けて読みたいと思う本でした。
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読んだ本の数:5冊
https://bookmeter.com/users/585631/summary/monthly/2023/9
■松本城のすべて 世界遺産登録を目指して
世界遺産登録運動に向けた出版というちょっとあざとい動機の出版ながら、よくまとまった松本城資料集として発見が多かった。林城時代から武田信玄征服時代の前史含め、明治以降、堀を埋められ遊園地や噴水もできて、二の丸は旧制中学や裁判所が建ち、いかに蔑ろにされながらもかろうじて生き延びてかの図板資料や写真が豊富で、頁をめくるのが楽しい。現時点での数ある松本城入門本の集大成と言えるのではないか。世界遺産登録に向けての見地から、国内の現存天守などとの比較記事も楽しい。今後の松本の町作りには松本城下復元は必須と思う。期待。
読了日:09月29日 著者:
https://bookmeter.com/books/19382998
■松本の本 第3号 2022年版
毎回楽しみな郷土雑誌。3年松本に居なかった間に3号(2022年)が出ていた。本を愛するみなさんの文集。特集は浅間温泉。浅間は切り込み面がたくさんあるよね。松本の面白い活動はほとんど、他から移り住んでくれた人たちが盛り上げてくれていることを実感、強調したい。藝妓さんのインタビュウはじめ、松電、火祭り、下宿屋と良い文章が並ぶ。編集長の路線バスの日帰りハシゴ旅記事は後追いしたくなる一本。昭和34年台風で流された河原乞食のゼンちゃんの記事は衝撃だった。渡辺さん、ありがとう。
読了日:09月28日 著者:想雲堂
https://bookmeter.com/books/20354543
■松本十二薬師めぐり
松本城下12の寺にある薬師めぐりの話が2019年頃から注目されはじめ、お坊さんや研究家が調べまとめた案内解説本。最も古い物証で1811年。一番の生安寺は昭和40年頃まで今のパルコの所にあったが深志高校の上の丘の上に移転。4番の安原十王堂は私の本家が明治後期の大火以降染物店を構えていた敷地だ。大火の前には十王堂は廃仏毀釈で打ち壊されてはいたが、時代の移ろいを身近に知る。他には浅間、下金井など、手を合わせたことはあれど、これは一度まわってみなくては。次々明らかになる過程の新聞記事市民タイムスのまとめが良い。
読了日:09月28日 著者:松本十二薬師をめぐる会
https://bookmeter.com/books/21617846
■遊牧民から見た世界史 増補版
1997年の本。著者の熱量を感じる文体で、グーグルマップで地形を確認しながらゆっくり読み進めた。中央ユーラシアの歴史的、地理的情報を一とおり頭に入っている身として読んだけれど、新しい発見も多くおもしろかった。キプチャクハン、イルハン、チャガタイハン、オゴタイハンは今そう言わないんだ。ペルシア語起源の言葉であるなど、言葉の再確認レベルでもおもしろい。何より立体地図を俯瞰するような、山と川との地形ベースでの語りが、おもしろい。のっている講演をきいているような読書。
読了日:09月16日 著者:杉山 正明
https://bookmeter.com/books/3323128
■探訪・奈良井宿 奈良井氏がいた
武田氏の信濃征服史の専門家、元信大教授の著者が40歳頃のとき1990年に書いた。旧楢川村のブックレットシリーズ一冊目。奈良井宿の戦国期の国人、奈良井義高の置かれた状況を、息子との対話の形で居館跡や峠を歩き古文書を引用し明らかにしていく。歴史学は簡単にはわからないことをコツコツ積み重ねていく仕事なのだ。
武田、織田、徳川、豊臣の板挟みの木曽氏、小笠原氏の、更に板挟みでたいへんストレスフルな地理的状況。鳥居峠は木曽であって筑摩なのだ。もっかい歩きに行きたいな!と思った。奈良井氏は絶えたが奈良井川に名は残る。
読了日:09月05日 著者:笹本正治
https://bookmeter.com/books/21576103
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