がある、という経験です。2回、不注意や慢心によるルート外れを経験
し、どちらの場合も余計な危険を背負ってしまいました。
1度目は2001年、両神山の金山沢右俣で。
2度めは2003年、上越・ナルミズ沢で。
金山沢は首都圏の沢だけに入渓者が多いところで、途中のナメや滝の様子
など記録も多い。行程も2時間半で稜線へ抜けられます。そのため、気楽な
気持ちで入ってしまい、目の前に順に現れる滝などを「聞いていた通りの場
所だ」という感じで通過していきました。
ところが、この沢は最後のつめに入る部分で、細かく枝分かれしていまし
た。しかも谷が細く樹林が上からかぶって、GPSのデータが飛びすぎて、
そのデータだけでは正確に現在地が把握できません。
そんな場所にさしかかったのに、後半の大事な分岐を右に間違ってしまい
、そのまま自覚せずに細いトイ状のツメを延々50分も上がり続けました。
分岐で間違えた直接の原因は、「記録」にあったナメをさっき越してきた
ばかりなのだから、左折する分岐はもっと先のはず、という思い込みでした
。GPSを携行しているし、問題があったら現在地は割り出せるはず、という
それだけの根拠で、地図も磁石も時刻も、その肝心の分岐で確認しなかった
のです。
後で思えば、あの分岐は、見通しの悪さからいって地図だけでは位置判定
がむずかしく、きめ細かく経過ポイントごとの行動時間をを記録してこな
いと、「そこで左折の場所」とは判断できない場所だったと思います。
そこを右に進んでしまった私。トイ状のツメは、あまりにも長く、次第に
傾斜が増してきました。途中で変だと思いました。だってこんな長いトイ
状のツメはないはずです。しかし、樹林が両岸からかぶり、岩場も右手に
現れて、地形の全体状況が依然つかめません。GPSの数値(地図表示は
ない昔のタイプ)は、かなりあちこちに飛びます。
それでも私は、なんとかなるだろう、きっと誰かが通ったルートだろう
と、深刻には考えず、登りあがりました。
ついに見通しの利く尾根の一角に出て、愕然としました。
以下は、私のサイトの記録。
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http://trace.kinokoyama.net/kanto/kanayamasawa2001.htm
12時02分、尾根に上がる。
意外にも沢ヤが使う踏み跡が見当たらない。「変なところに出ちゃったか
も……」。すぐ左の小さな高みにやぶを漕いで上がってみる。「おおっ、両
神山だ。赤岩岳だ」。遡行してきた深い谷を挟んで、岩の峰が展開する。
両神山の右手、すぐ間近に、なんだか予想外の頂がある。あれが、支尾根
の1683メートルのピークだろう。ほんとうだったら、あのピークの向こ
うの鞍部に上がってくるはずだった。水平位置にして250メートルほどの
、まちがい。私が上がったところは、両神山の縦走路から張り出した支尾根
の、そのまた支尾根(支尾根から直角に張り出した小さな尾根)だっ
た。右手に続く支尾根の先(西)にはニードル状の鋭い岩峰や薄刃の
頂などが連なっている。こちらも200メートルほど距離がある。私の技術
では、ほとんどたどれない岩稜だ。「あそこに突き上げないですんだのは、
幸運だった」。
12時20分、1683メートルピークをめがけて、やぶこぎ開始。岩ま
じりの尾根はルート取りがむずかしく、その上、断崖の脇でへつりをやらさ
れたりする。正式の支尾根に出ると踏み跡が出てきたが、危うさは同じ。岩
場が順次、現れて、尾根筋をストレートにはたどれない。1ヶ所、ルートを
見失ったところで、運良く見つけた踏み跡は尾根の左下をまいていた。
すぐ前方に、一段高い岩と潅木のピークが見える。目標の1683メート
ルのピークか。そこに登り返す踏み跡は、傾斜が60度くらいの木登りミッ
クスの急登だった。踏み跡に引かれて、尾根の右にまいていったら、岩場の
下で足跡がかき消えた。苦労してまた尾根上にもどり、左側から巻き気味に
1度下降し、登り返す。
(同じルートをたどったと思われる「奥秩父・両神の谷100」(山渓)の
記録によると、この尾根を懸垂下降もまじえて踏破している)
1683メートルのピーク着。てっぺんには、小さな三角点が設置されて
いた。そこからは、ずっと明瞭な踏み跡が鞍部を経由して、縦走路へと延び
ていた。ここに源流から上がることができていたら、どんなにか楽だったろう。
・・・13時12分、ようやく稜線の縦走路に出る。
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データ・記録が多い山に、GPSも携行。その慢心で頭からぬけてし
まった、地図、磁石、綿密な行動記録。おまけにGPSの測位には真夏の樹
林と谷筋の悪条件。
私の場合は、このときと同じような失敗を、2年後にナルミズ沢でやって
しまい、迷い込んでしまった支流から主稜線への脱出行を強いられました。
http://trace.kinokoyama.net/josinetu/narumizu040808.htm
このときも地図、方位、行動時間の記録という基礎的確認のさぼりが原因。
別の沢に入り込んでからは、何の基礎情報もなく、ルートファインディ
ングの基本な力が試されることになり、GPSはあくまでサポート手段
ということを、重ねて痛感しました。
GPSって、確かにピンチのときは、大いに助けられます。
持ってるだけで安心感がでちゃいますが、実はルート取りの基本の基本
をおろそかにしかねない「わな」が、待ちうけているように思います。
GPS、絶大な安心感があるだけに、そこに大きな落とし穴がある 、GPSを使っているだけに大切な教訓として読ませていただきました。
tanigawaさん おはようございます。
地図表示のないGPSってGekoみたいなタイプですか?
数値表示のみのロガーとか?
いずれにしても、山で油断は禁物ということですね。
westupさんへ。
分岐ごとにルート判断するのは、自分なんだということが、GPSがあると安心感から、ついついおろそかになる。ほんとは緊張しなければいけないところを、甘く見ちゃうということでしょうか。
bmwr1100rsさんへ。
機種は、90年代の基本機種の、ガーミンGPS12です。極めてクラシックなもので、私が導入したころは、山にGPSを持ってくる登山者は、極めて稀れ。使っていると、いつも質問が集中しました。パソコンとの連携がようやく広がりだしたころでした。
写真をいまこの日記にアップしました。
12チャンネルで、性能は標準的なものでしたが、2000年代半ばに森の中でも精度が良い機種が出てきました。
地図表示されるか否かは、私の場合、さほど不便は感じません。緯度、経度のラインを引いた紙地図を作製して携行しているので、通常ならば30メートル以内の精度で、位置を確認できます。
http://trace.kinokoyama.net/kashmir-i/GPSsokui.html
問題は、南関東などでの樹林のかぶり、谷底の悪条件が重なると、かなり困ります。最近の新型機種は、悪条件でもまずまずに測位してくれるようです。
沢での道迷いは怖いですね。
私はGPSないのですが
沢に行く前に地形図を見て
(地形図も本当に正確ではない場合もありますよね)
本流がまっすぐで高低差がなかなか無い沢
(まるで魚の骨みたいな )は
同じ方角から枝沢が次々入ってくるので
非常に現在位置の把握が難しいと感じます
誤った場合
丹沢などはヤブでも鹿に下草が食べられているので
どこに上がってもある程度問題ないですが
奥多摩や妙義では場所により非常に岩質が脆かったり
とても歩くのが難しい石楠花のヤブであったり
それ以北の沢では雪で洗われて
ルートが大きな高まきになったり
密な笹薮だったり
ひとつの間違いが2時間のロスにつながることもありますよね
tanigawaさんのように
慣れたころに
もう一度振り返ることはとても大事だと思いますし
私もいつもそうでありたいと思っています
karamomoさん、こんばんは。
さすが、karamomoさんのコメントは、実地の体験をベースにした抑えどころが、きちんとこめられていますね。
現在地確認とルートを見出すことと、やはり地図と磁石と現地感覚が、基本と思います。
GPSは、プラス・アルファの装備。
それでもって、たとえばルートが開けるわけではありません。
丹沢、奥多摩など関東南部の沢は、谷そのものが深いうえに、岸の急斜面は樹木が茂って、頭上に覆ってくるので、GPSはしばしば測位不能になります。
そのうえ、枝沢も入り組んでいる。
雪国の沢との違いです。
私は、道迷いの経過をふりかえるなかで、地図と磁石、綿密な現場での記録、そしてkaramomoさんも書かれた入山前の入念なルートの押えの大事さを、改めて実感しています。
GPSは、雪国の空が開けた沢や、山スキーなどでは、とても効果を発揮しますよ。
登山道をすすむだけの山行きの場合は、携行してもトラック・ログを記録するだけで、ほとんど使う機会がないです。
tanigawaさん今晩は
GPSの進歩変化は非常に早いです。
経度緯度で自分の位置を割り出すのは手間がかかり頻繁に確認はしづらいと思います。
ルート転送できる機種ならば5分も歩けばルートから外れたのが解ります。
またポイント転送をすれば、○○滝など自分の位置、目標が明確に解ります。
以前はGPSは軍事目的の為にスクランブルがかかっていましたが、今は開放され制度も非常に良くなっています、国産GPS衛星みちびきを捕らえられればもっと正確になるでしょう、
GPSを過信してはいけないと思います。
携帯にデジカメはコンパスの大敵でもあります。
tanigawaさん、こんばんは
GPSもただの道具なので使いこなせるかどうかは、結局本人の山歩きの力量次第のように思えます。判断が必要となる肝心な場所にきたときに確認を怠ればコンパスを持っていようがGPSを持っていようが意味が無いです。
そういう意味ではtanigawaさんの仰るように事前の準備や現地での判断等のほうが重要な意味を持つのではないでしょうか。
私はGPSを持っていてもたびたびルートミスをしているので、そう思っています。
それからGPSはコンパスよりも地形等による得手、不得手がある道具だと思います。なので普段から使い慣れて短所をしっかり把握しておかないといざという時に、逆に危険な道具になりかねないと思います。
kidekiさんへ。
私は、開発途上のカシミール3Dの作者ともお会いしたことがあり、古い知り合いです。
GPSとパソコンの連携は、以前も今も、緊密です。私のクラシックな機種でも、ルートやウェイポイントをハンディGPSの側と双方向で交換可能、また白黒画面に拡大表示できます。ルートを外れても警報音などはなりませんが、画面上、仮に始終見ていれば、電波が受信できる条件ならば気がつきます。
それから、現場の要所で地図を見ることは、基本的なことであって、この手間は苦になりません。地形を見、地図を見、位置とルートを判断する。登山は、この繰り返しです。
両神山のこの沢の場合は、判断を求められる分岐が連続することと、谷底で夏は深い樹林がかぶるため、まともなデータがとりにくい事情がありました。
谷底から見上げると、岩場などに挟まれて空が細長く、その空も枝と葉が重なって隠れています。GPSにとって、苦手な条件が二重に重なっています。
新しい機種では、岩場や樹木の反射波を認知したり、微弱な電波を受けられたり、直前の受信結果と対照して誤差の大きな測位値を除く機能が付いています。
これで、連続的に電波を受信できる条件では、かなり改善され、実用度は上がっています。
しかし、真夏の深い谷底を通しでたどるような条件でどこまで受信、測位が可能かは、やはり程度問題と思っています。
沢は、とくに関東南部の条件では、登山者の原始的で、本能的な警戒、防御、判断が試される世界ではないかと思います。
koizさんへ。
今回の「道迷い」の事例は、もともと登山道がないルートをたどるケースだったので、前2回とはちょっとケースが違ったかもしれません。
電波の受信と測位の条件も通常ではありませんでした。
登山道を進む場合とは、条件が違い、ハンディGPSにそういう「穴」があることは、多くの方が体験していることと思います。
現実に道迷いをしたときも、谷や樹林などの条件に登山者が置かれるケースは多い。
そういう事例で紹介させていただきました。
たとえばそういう条件でビバークした場合、GPSの電池が切れちゃうこともありえます。これは古い機種ではなはだしいですが、冬季などはかなり可能性が強まります。
一方で私は、GPSにずいぶん助けられてきました。
とくに山スキーの場合、現在地確認の正確さは抜群で、頼りがいがあります。
http://trace.kinokoyama.net/josinetu/iidunayama2002.htm
上に書いたナルミズ沢での稜線への脱出も、GPSの正確な位置確認は、力強かったです。
しかし、それらのこともこみこみで考えても、山ではやはり現場での綿密な時刻の記録、地図と地形を対照させての実地の判断が基本と思います。
基本的な力を問われるところほど、そうであると感じます。
僕も沢ではないですがバリエーションで初めて入る山域でGPSと地図を頼りに次々に現れるピークと尾根を繋ぎ最後のピークに着き安心してしまいそこで降りる尾根を間違え酷いルートを取るはめになりました。
正規ルートに戻る前に段々暗くなるのは恐怖でした
沢でも寒いため滝を良く見ず登れる滝を危険な高巻きを選択し結果滑落もしました。
やっぱり客観的で冷静な判断が大切ですよね
tetu930さんへ。
道の不確かなルートや、沢をたどる場合、終始、現在地確認を頭に入れて置かねばならず、それはわかっているのだけれど、ちょっと油断したり、抜けたりしたときに、目的のルートをはずしちゃうことがありますよね。
思い起こすと、そういう場合は、チェックを間引きしていたり・・・。
GPSのサポートを受けている場合でも、自分が主体であり、緊張感をもっていたいと思います。
私が最近、心配しているのは、地図表示のGPSがとても便利なために、頼り過ぎが出ていないかということです。地図と磁石とから現地で判断するのではなくて、先人のトレースをGPSを頼りにたどる登山形式として、もっぱら使う。
地図を一度も広げなくとも、行き帰りが可能なケースも、生まれていると思います。
ところが、山は、雪や薮の状態、渡渉地点の沢の水量などで条件は様々。入ったときの状況に応じたルート取りの判断が求められることもあります。
誰もが経験するように、あらぬルートへ迷い込むこともある。
そういう場合、GPSの支援は心強い。しかし、情報がないところほど、自分の基礎的な力、読図の力などが試されると思います。
両者あいまって、登山は本来的におもしろくなるし、危険回避もできるということを感じています。
私は登山者自身の、危険認識、警戒感、そういう本能が、安全の上ではとても大事だと、昨今の遭難例から考えています。
昨今の登山形式は、そこから離れて、いろいろな問題が生まれています。
ところで、いま、Googleで「GPS 道迷い」のキーワードで検索したら、19万件のうち、この日記がTOP5に入っていました。
かなり多くの方が、この問題に関心があるということですね。
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