|
70年代には標高3100m付近にまで広がる永久凍土が確認されました。90年代には標高で100m分、上へ後退し、昨夏の観測では、永久凍土
は山頂部付近に切れ切れに残る状態になっています。
永久凍土は、70年代に大雪山の白雲岳でも発見され、90年代後半に日高・幌尻岳北カールや、立山・内蔵助カールでも新たに見つかっています。
富士山と大雪のものは、冬に雪が積もれないほどの烈風にさらされる地表が、強く冷却されて、地下深いところの凍土が成長し、夏にも融けずに残ったものです。
これにたいして、幌尻岳や立山のものは、膨大な積雪がカール内の地表を被うことで、冬に成長する地下の氷が何千回〜もの夏を越してきました。
永久凍土は、最終氷期の末、今から2万年前から1万数千年前に、気温がなお低かった場所に取り残されてきたものです。なかには、数千年前に形成されたものもあると見積もられています。富士山の場合、当時から成長を続けてきた活火山ですから、そうした噴火を重ねながら、地下の凍土は成長・縮退を繰り返し、それでも帳尻をなんとか合せて、70年代までは山頂部の地下に面として存在してきたことになります。
それが、最近は噴火も絶えて久しいのに、なぜ、こんなに早いスピードで縮小しているのか? 実は富士山頂でも、平均気温はこの期間に、1度上昇。とくに永久凍土が勢力を盛り返すはずの冬場の気温が、70年代より1度〜4度も上がっているとのこと。
この気温変化のもとで、本来は標高2500m以下にしか生育しない植物が、山頂部に上がってきているそうです。
現場で心配されているのは、生態系の変化だけではありません。
急傾斜の山頂部を基礎から支えてきた永久凍土が緩み、大小の陥没や崩壊が加速するのではないかということ。私たちは、北アのとくに北部の稜線付近で、あちこちで二重山稜や舟窪地形を目にします。小蓮華岳、雪倉岳、種池山荘などなど。あれは、地表を支える地下の地層に大量の水が入り込むなどして、地滑りや陥没を引き起こした跡です。
(最終氷河期の末にも、山々を覆っていた氷河と、地中の凍土の消失時期には、日本アルプスは大規模な地滑りや陥没が繰り返され、いまの地形が生みだされてきました。)
もっと心配されていること。それは、富士山で起こっている永久凍土の融解は、平均気温などで同等の条件にある極地方にも及んでいるのではないか? ということです。
アラスカでは、まとまって連なっていた永久凍土帯が、この1世紀余りで100km、北へ後退したことが疑われています。地盤が緩んで海岸の住居は地面ごと波にさらわれています。
二酸化炭素ガスは、地球の表面では、海と、熱帯雨林の地表と、そしてツンドラ地帯などの永久凍土の中に、大量に収められています。二酸化炭素の20倍の温室効果があるメタンも、永久凍土地帯に大量に眠っています。
過去に、例えばこの80万年の間に、地球がもっと暖かかったときは約10回ありました。そのときは、大気中の二酸化炭素濃度も大きな値を示していましたが、この二酸化炭素の出所は、熱帯雨林と永久凍土地帯ではないかと、疑われています。
ところが、いま、これまでの自然の変動レベルとは違って、人間が排出した二酸化炭素のために、温暖化がすすんでいます。二酸化炭素濃度は過去80万年の約10回の最高値(=温暖期と符合)の、300ppmのレベルを、すでに90ppmも上回っています。未体験ゾーン。すでに、この濃度が引き起こす温室効果だけでも、一定の期間のうちに地球の永久凍土地域は大きく減少する水準です。
富士山の永久凍土は、特別な標高の条件で小規模に維持されてきたものです。10年単位の急な平均気温の上昇では、息も絶え絶えになるのは当然です。
が、それは、極地方に起こり始めている大規模な融解の、一つの兆候であるかもしれない。
今後、広大な極地方で永久凍土が融解すれば、閉じ込められてきた温暖化ガスの大量放出が引き起こされます。温暖化ガス濃度の増加と、気温上昇との悪循環に、スイッチが入る。(気温の急速な上昇にむかう「正のフィードバック」の一つ)
いまの推移なら、富士山の永久凍土の消失は3年先、5年先には、やってくるでしょう。そして、北の広大な永久凍土地帯でも人の一生の単位よりは早いペースで、そこに進む可能性があります。
この現実に、街の中だけで暮らす人々よりも、自然の中に入る登山者はより身近に接することができる。そこを大事に考えたいと思います。
参考にしたページ。
http://www.geog.or.jp/journal/back/pdf111-4/p574-582.pdf
http://www.asahi.com/science/update/0909/TKY201009090126.html
いろいろ考えされられる日記ありがとうございます。
以前から気になっていることがあります。
それは「氷河期」です。
これまで地球は数回の氷河期がありました。
これから先はもう氷河期はないのかと。
少し調べてみましたら、
確かに20世紀後半は温暖化傾向が著しかったが、
21世紀に入ってミニ氷河期の兆しがある。
ここ数年、北極の海面氷結面積が増加しているとか。
あくまで一説ですが・・・
勉強不足で、詳しいこと言えませんが、
いずれにせよ
地球環境が良くない方へ向かっていることは確かです。
私も自然と接しながら、
大事に考えていこうと思います。
>私も自然と接しながら、
大事に考えていこうと思います。
日本の場合は大手出版社が「懐疑論」「否定論」をしばしばとりあげ、本屋のコーナーも否定論が目立ちます。いろんな話が飛び交っているだけに、私も、自分で考えることはほんとに大事だと感じてきました。
>これから先はもう氷河期はないのかと。
ほんとうのところ、氷河期の原因は定まっていません。
ただはっきりしていることは、氷河期がいずれ必ずやってくるにしても、その周期は数千年から万年単位であることです。平均気温が5度余り上がるのに、それだけゆっくりとすすむ。
ですから、氷河期にいまから対策をとって備えるということは、問題になりません。この場合もまず原因を押えることですね。当分は。数千年後の未来人は、想像を超えるエネルギー、食糧対策で、氷河期に備えるでしょう。
一方の温暖化は、上に書いたように人間の寿命のタイムスケールで確実に激化するところまで来ています。被害も始まっている。
いまのペースで排出量が増えると、2030年ごろには、21世紀に許される排出総量を早々と超えてしまいます。このままだとわずか90年後に5、6度気温が上昇し、さらに次の世紀も上がり続ける。
人為的な作用は、自然の気候変動とは、速さも、気温上昇の程度も、くらべものになりません。
ロシア国内では、温暖化で、「むしろ食糧生産が増大する」という計算も国際的になされてきました。以前には。
しかし、温暖化というのは、地球の大気のエネルギーが強まることでもあります。気候の大きな変動をもたらします。いまの世界的な穀物高騰も、ロシアの大干ばつ・アジアの洪水、異常高温が引き金になっています。食糧問題は、2度以内の上昇でも途上国が真っ先に被害を受けていますが、先進国にとっても深刻化します。
>21世紀に入ってミニ氷河期の兆しがある。
>ここ数年、北極の海面氷結面積が増加しているとか。
北極海は、観測史上初めて、夏に氷結部分(海氷)が消失しようとしています。沿岸の諸国は、北極海の「海びらき元年」などとして、海底資源開発に乗り出しています。
北極の海面は氷結どころか、縦横無尽に動ける開けた海になりつつある。氷を失ったシロクマの悲惨から、人間たちは事の進行に気づくべきです。
実際の観測をふまえた議論が大事です。
ミニ氷河期では、気温はわずか0・5度かそれ以下の上昇です。これは温暖化による気温上昇と一桁違います。これも、問題のスケールをみないと、正当な比較になりません。去年の「朝日」の問題の記事が、ちょっとミスリードしてますね。
「ミニ氷河期」説の周期に入り込むはず時期の今、逆に人為的な原因で気温の上昇は加速しているのが現実です。
(急に話は変りますが)
商店街などの「くじ引き」のときに、廻すと「赤玉」が出る六角形の用具を使います。あれは、「新井式回転抽選器」というのが正式名なんだそうです。
この「抽選器」に109個の白い玉と、10個の赤い玉とを、入れます。
がらんと廻したら、1個目に赤玉が出る確率は、119分の10です。
2回目に赤玉がまた出る確率は、118分の9。
3回目に出る確率は、117分の8。
これを続けて、9回目にまた赤玉が出る確率は、110分の2。
最後の10回目にだけ、白玉が出た。
以上をまとめて、最初の10回のうち9回、赤玉が出る確率は・・・
おおざっぱに言って、1兆分の1より小さくなります。ありえない強運。
ところがこのありえないことが、この119年間の地球の気温には起こっています。過去119年間を高温の年から順にならべると、TOP10に2001年以後の10年のうち、9つが並ぶのです。
その傾向はTOP20(1990年代)にも現れていますから、何が始まっているかは明確です。
地球の平均気温ははっきりとした上昇傾向にあり、最近にいたるほど加速している。それが、富士山頂部の永久凍土の激減にも現れていると思います。
NHKを始めとするマスコミ、そして日本の学校教育は、もっとしっかりしてほしいです。マスコミについては、大勢は、温暖化をなるべくとりあげないでいますね。民法はスポンサーがつかないのでしょう。とくにここ数年のNHK。以前はドキュメントがよかったのに、もう長いこと、実態報道は音無し。
仰るとおりです。
地球本来の寒暖周期と
人為的な温暖化の速度は比べものにならないです。
明らかに地球温暖化が加速しています。
なのに何故、最近、
ミニ氷河期だとか北極の海面氷結面積が増加しているとかの話が出てくるのか、
考えてみました・・・
近年、世界経済は百年に一度の不況に直面しています。
この状況で温暖化抑止を進めることは、さらに経済が悪化し、より深刻な世界経済状況に陥ります。
そのような事態は避けたいので、国家は経済が活発化するよう動き出します。
(将来の問題より、目先の問題が大事ということで)
先に述べた話もそうですし、
教育、マスコミ報道等、
「温暖化は心配しなくて宜しい」と
人々に嘘の情報を流し出してきます。
政府・マスコミ等は信用しないほうがよさそうですね。
あと、公表される観測データも捏造の可能性がありますし・・・
だから、
自然と直に接する機会の多い私達は、
注意深く地球の黄信号・赤信号を感じ取らなければいけないんですね。
そんなことを思いました。
山では、温暖化が引き起こす、いろいろなことが、すでに始まっています。
登山者は、その中を歩き、泊まり、観察をする。花や動物にも親しむ。
山の過去の出来事や、人間の営みにもふれる。
そんななかで気がついたことは、ニュースや本などから得られるものと同等以上の確かさもあるのでは、と思います。
ですから悲観はしてません。
経済や制度的なことでは、あれこれを理由にして、今度は温暖化対策も後回しにする。実は、どんな問題でも、そこがいまの日本の遅れにつながっているように思います。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する