北国の植物と生活11）エゾカンゾウ（ニッコウキスゲ）は夏を告げる花

　今回も旬の花。エゾカンゾウをとりあげます。
　この花は、本州では一般にニッコウキスゲの名前で通っています。
　しかし、北海道と本州の名前と種の異同を列記すると、かなりややこしいことになっています。

１）ニッコウキスゲと同一種とされるもの。すべて同一種。
　
　本州　　ニッコウキスゲ。本州の高山。
　　　　　ゼンテイカ。ニッコウキスゲの本来の名称。
　北海道　エゾカンゾウ
　　　　　エゾゼンテイカ　

２）ニッコウキスゲとは別種のもの。それぞれ別種。

　本州　　ユウスゲ。夕刻に開花。
　　　　　ムサシノキスゲ。関東の平地、希少。
　北海道　エゾキスゲ。夕に開花、花弁にオレンジ色も。

　このシリーズで資料に使ってきた「分類アイヌ語辞典植物篇」によると、アイヌの人々は、エゾカンゾウのことを「カッコク・ノンノ」（カッコウの花）と呼びました。これは、カッコウ鳥が鳴きだす時期に花をつける様から、名づけられたもの。夏の季節の到来をこうして感じ取ってきました。

　そういえば、私が札幌で住んでいた学生寮は、小規模ながら比較的まとまった自然林や小川が残り、初夏にはカッコウが鳴いていました。校舎がすぐそばなのに授業をさぼって、ぼんやりと空を眺めて、鳥に合せて「かっこう！」と鳴いてすごすのを、「郭公ストーム」と呼ぶ学生もいました。
　何というか、少年老い易く、学成り難し・・ですね。

　アイヌは、カッコク・ノンノの花を酢で味付けて食べたそうです。このごろの季節になると北海道では自然の食べ物にあふれかえります。保存食にできるわけでもないエゾカンゾウは、箸休め、ぐらいの位置づけだったのでしょうか。
　エゾカンゾウの種子を食べることもしたそうです。
　北海道でエゾカンゾウが群生するところは、半端でなく広大です。

　私も、ヤブカンゾウの蕾だったら、三杯酢で味わったことがあります（写真）が、ニッコウキスゲの仲間には、手が出せません。
　写真の黄色の花は、車山のニッコウキスゲです。

コメント

イグルスキー米山

RE: 北国の植物と生活11）エゾカンゾウ（ニッコウキスゲ）は夏を告げる花
以前、乾物食品に凝っていた頃、ゆりの花のめしべの乾物（中華食材）をたくさん食べていたことがありました。写真がそれに似ていて、久しぶりに思い出しました。

カッコウといえば、同じく寮で二日酔いの明け方、3時ころには明るくなる季節、胃液のすっぱい匂いと裏腹に原始林からさわやかなカッコーの鳴き声が響いてきたのを忘れられません。カッコーストームの季節でした。カッコウストームはヒグマ研究会（クマ研）の当番でした。

tanigawa

RE: 北国の植物と生活11）エゾカンゾウ（ニッコウキスゲ）は夏を告げる花
yoneyamaさんへ

　中国ではいろんなものを食べますね。
　ゼンテイカ（ニッコウキスゲ）など、ワスレグサの仲間は、種をつけないものもあるらしく（ヤブカンゾウなど）、その場合、地下茎（根茎）だけで繁殖するものもあるそうです。
　もちろん、種子も繁殖の役目をするものがある。

　土手などで刈り払いされたり、草を食べられても、生き残る。繁殖力が強い野草だと思います。

　そのメシベは、やはり立派ですね。

　恵迪寮は、８０年代も「郭公ストーム」があったのですね。旧寮のころは４棟あるうち、一番森に恵まれた南寮で７０年代にはおこなわれていたようです。
　あの森は、春のコブシが華やかでした。