原発・野外活動情報16） 野生きのこのセシウム汚染と、菌根菌

　この情報で２度ほど取り上げた野生きのこの放射能汚染が、現実の問題
になってきました。チチタケ（写真）から２万８千ベクレルの放射性セシ
ウムが検出。現場は原発から６０キロ離れた福島県棚倉町。栃木、茨城県境
に近く、やはりこの状況では北関東の野生きのこは、かなり汚染が進んで
います。
　野生きのこの暫定基準は、１キロあたり５００ベクレルです。

　チチタケは、その北関東や会津地方でとくに好まれる、地元では値段も
高価なきのこです。
　マツタケ、ホンシメジ、アンズタケなどと同様に、菌根菌の仲間で、樹
木の根に菌糸を接合して、樹木に土の養分をおくり、自分も樹木から養分
を得て、生活しています。
　私の日記では、菌根菌は、こう紹介しています。

おや、まあ！キノコ 18） 山の守番の菌根菌たちと、樹木との共生
http://www.yamareco.com/modules/diary/990-detail-21288
　おや、まあ！キノコ　２）チチタケに憑かれた栃木県人
　http://www.yamareco.com/modules/diary/990-detail-11688

　今回の調査は福島県が実施したもので、チチタケやマツタケは出荷自粛
となりました。おそらく栃木や群馬なども、検査すれば一定の値が出ると
思います。

　野生の、とくに菌根菌が原発事故で飛散した放射能を蓄積しやすいこと
は、チェルノブイリ事故後にさまざまな研究がなされたきました。
　菌根研究会公式Webサイト
http://jmrs.ac.affrc.go.jp/

　日本土壌肥料学会
土壌・農作物等への原発事故影響ＷＧ
http://jssspn.jp/info/nuclear/cs-2.html

　チャルノブイリで飛散したセシウムは、いまも世界中のきのこに、痕跡
を残しています。それに今度は、日本の事故の分が加わりだしたというこ
とでしょうか。
　菌根菌が問題にされていますが、土壌・農作物等への原発事故影響ＷＧ
の内容を読むと、土壌や、朽木などから生え出す「腐生菌」（ナメコなど）
にも程度は少なくとも、汚染はすすんでいると見られます。

　また、半減期３０年のセシウム１３７ですから、チェルノブイリ後、
ずっと、きのこの測定値には現れていたように、この現状は１、２年ですぐ
に好転するものではありません。
　好むと好まざると、長い付き合いになります。

　判断はそれぞれの方がなさってください。私は５０代ですから、少しの味
見は気にせずします。私のきのこ探索は、撮影が中心ですから、気にせず森
にも大いに入ります。
　現地に近いエリアと、それから成長期のお子さん、妊婦、授乳中のお母
さんは、あえて食べることまではしない方がいいと思います。
　関東北部やその以北の森は、水がたまりやすい湿地などは、測定すれば
かなりの数値が出ると思います。

コメント

ゲスト

RE: 原発・野外活動情報16） 野生きのこのセシウム汚染と、菌根菌
tanigawaさん、おはようございます。

参りましたね・・・。
棚倉町はよく立ち寄るところなんですが、この秋はきのこ汁が食えんのかな・・・

tanigawa

RE: 原発・野外活動情報16） 野生きのこのセシウム汚染と、菌根菌
　牛の稲わらからの汚染のときの、稲わらの出荷地域
も、エリアとしては今回のきのこと同じ方角です。
　事故の大量飛散のときは、東京都も放射能の雲に
包まれました。でも６０キロだと、さすがに濃いです。
　一帯の地表付近の測定値は、０・５マイクロシーベ
ルト前後ですから、私の実家なみで、とくに高いとは
いえません。

　データにはかなりバラツキがあったので、山の地形
や地表の雨水の流れ方とたまり方なども、影響している
と思います。
　セシウムは、雨どい、排水溝、水たまり、池の底な
どに濃く集まり、なかなか薄くなりません。

　茨城もきのこ研究者が多いので、調べられていると
思います。県がきちんと測定しておかないと、森に入る
際の参考情報にならないですね。

mamede

RE: 原発・野外活動情報16） 野生きのこのセシウム汚染と、菌根菌
菌学者達よ何故原発再稼働ＮＯの運動をしないのか、特に大学の研究者にお願いしたい。森は菌類によって育まれ生物多様性の根幹をなすものである。其れが、今あっても無くても良い原発の議論が連日不思議な識者達によって未来を否定する流れに成ろうとしている。原発は常に形を替えて死の灰を空高くまきちらし海に注いで居る。人間が制御できないでは無いか。地震を制御出来るのか。何故安全なのか。自然を破壊し生物多様性を破壊する。こんな事が分からん大人が何と多い事か。福島では猫の額程の除染に躍起に成っている。最近林床の汚染濃度が高い事に恐れをなす事になった。末期的症状である。

tanigawa

RE: 原発・野外活動情報16） 野生きのこのセシウム汚染と、菌根菌
　mamedeさんへ。

　ご意見、もっともと思います。
　菌類や森の生態の研究者は、これまでは原発問題とは縁が薄い位置で研究されてきた方々が大半でした。
　それが、チェルノブイリで国際的も脱皮がすすみ、今回の福島の事故では、その最初の段階から、生態学的に汚染の程度と循環などを調べる動きが始まって、継続されています。

　外に向かう運動をどのように進めるか、可能かということでは、個々人の考え方や条件があり、一律にはできません。
　しかし、研究者がそれぞれの専門分野から実態を究明し、データを重ね、研究者の間に認識をひろげつつ、専門外の方々に明確な根拠がある足場を築いていくことは、運動にとっても貴重な貢献になると思います。
　これは、土壌や、森林の生態系の分野でも同様です。

　意思表示には、いろいろな方法があり、それを広くとらえることが、自主的な運動の土台での力になると思います。