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2012年05月18日 06:11山の安全全体に公開

検証 白馬岳低体温症遭難2)カロリー収支の角度から装備と行動食を見る

 今度は、白馬岳の6人パーティーを含め、幾つかの経験、事例から装備と食糧の面を検討したいと思います。
 低体温症は、究極のところ、カロリー収支の結果が、事態をおおもとから左右することになります。
 カロリーの「収入」の方は、食べて行動することによる熱の産生です。
 「引き算」されるのは、外界へ熱が奪われることです。

 体温の限度以下への低下(体幹部で35度未満)は、この熱の出入りと、登山者がその拮抗のレベルをどれだけの時間、耐えて行動し続けられるか、という継続時間の問題も加味されて、左右されてくると考えられます。

 たとえば、
 たとえ体熱を奪われやすい気象条件で行動し、
 そのうえ装備の一部に弱点があっても、
 登山者が対抗できるだけ食べ、
 また行動による発熱量が、失われるカロリーと同等レベルであれば、
 行程の長さ如何によっては、
 生還が可能です。

 つまり、装備、あるいは天候という1つの角度だけから、○×式には、実際の問題を把握しがたいのが、低体温症の問題です。

 今回の白馬岳の遭難では、着衣と装備については限られた範囲ですが、一定のデータがあります。発見時の着衣については、警察と遭対協の発表はほぼ一貫しています。
 食事については、栂池ヒュッテの出発時に、2食分の「弁当」をもらったという情報があります。

 これらに加えて、ほぼ同じ気象条件のもとで行動した登山者が、それぞれどう行動し、どのように身を守ろうとしたかの一定の情報もあります。

また、過去の記録には、気象条件としては低体温症の発症の危険が大きくあるなかで、行動し生還した登山者の、関連するデータも、参考にできるものがあります。

 これらから、「カロリー収支」を定量的につかみことはできませんが、身を守る対応の様子と考え方は、見えてくる問題があるように思います。
 以上のようなアプローチで、ケーススタディとして考えながら、低体温症にどう対応したのかを、考えていきたいと思います。

 なお、設定する問題としては、「始めから悪天候では行動しなければいい」「入山しなければいい」というご意見もあると思います。
 これは私も通常は、そう努めたい単純明快な処方です。
 でも、これを原則として固めてしまって済ませられないのも登山です。

 登山者は、悪天候の中で、あるいは装備が不足するなかで、生還を期して行動する局面に、ときには立たされます。引き返し覚悟の登山もある。大雨のもと翌日の晴天を確信して目的地に入る登山もある。悪天時には退避する用意をしながら、数日かけて目的を遂げる登山もあります。
 ヤマレコでも、雷雨や吹雪はもちろん、登山道からの転落、雪渓下の沢に転落、道迷いなど、所持してだけの装備と判断とで、予想外の災難に遭遇し、生還したケースが様ざま報告されてきました。とくに積雪期やエリアによっては、不測の怪我などが事態を悪化させる場合があります。
 なんでもない、一般ルートであっても。

 そのときに、用意した装備や食料を活かしながら、低体温症は、用心の大事な対象です。
 山には絶対的な安全圏はないのですから、私も、できるだけ多くの事例から、学んでいこうと思います。

*このシリーズの関連するスレッドは、下記をごらんください。
資料から検証 白馬岳の低体温症遭難1)当日の目撃者の証言
http://www.yamareco.com/modules/diary/990-detail-34876

検証 白馬岳低体温症遭難3)持参した保温衣料はなぜ使われなかったのか?
http://www.yamareco.com/modules/diary/990-detail-35495

(このスレッドは、じっくり週単位で少しずつ書きこむことになります。テーマに見合う情報、事例、体験、意見などがありましたら、コメントとして書いてくださるとありがたいです。)
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コメント

低体温症に限らすカロリー収支の考査。
このスレッドを拝見いたしまして、皆さんのお役立てればと思い、コメ
ントを入させていただきました。

小生・登山はもちろんですが、冬季になるとハーフ・フルマラソン
(時に駅伝等)を中心にやっておる市民ランナーでもあります。

行動規範のパターンこそ違うなれど、やはりランニングのレースの時
にもこのカロリーコントロールは重要な要素であってその辺の摂取
配分を見誤ると、即正直にタイムに影響をきたす事間違いない
です。

ここでスレ主の方の言われている消耗カロリーと摂取カロリーのバラ
ンスの事を書かれておりました。

内容的には「全くもって」という感触なのですが、問題はその摂取した
食料が吸収されてカロリーと変換するのに、若い20代で30分程。
私のような40代のシニア(※マラソンの世界では40歳超はシニア
部門)2時間程というタイムラグがあるセオリーがございます。


要するに、そのような理想的カロリー摂取は自分の体にエネルギー
として変換されている状態にのタイムラグを考えて、事前に補ってい
かないと天候の急変等の憂い目に遭ってから摂取しても間に合わ
ず、また時間経過を追うごとに体力的に吸収能力が衰えて、ますま
す悪循環に嵌ことになります。

(コレはマラソンレースでも同様。フルマラソンの時スタート5K・10K
の補給が一番重要であって、疲れた30K・35Kで補給しても今度
は体が受け付けない。)

詰まりは、今回の場合、小屋でお弁当を受け取った時点で食して
おれば結果はあるいは変わったかも知れません。燃焼系や即エネル
ギー系のアミノ酸粉末等も水と一緒に飲んでいれば尚良かったかも
知れません。

どうしても年齢を追うごとに、心肺機能や吸収機能の劣化は避けら
れない生理的事実と、ココの処の天気図に載らない「上空の寒気団」
の存在をマークするという、情報収集も欠かせなくなってきていると思
います。

平たく記述するとお腹が減ってから食べては遅く、のどの渇きを感じた
時に飲んでも遅いという、事はマラソンのコーチにも良く言われる程で
す。

皆さんの知恵を出し合ってこのような惨事を少しでもなくしたい気持ち
でレス入れました。
(つたない文章ですみません。)
2012/5/18 12:30
RE: 検証 白馬岳低体温症遭難2)カロリー収支の角度から装備と行動食を見る
tanigawa様、はじめまして

僭越ながら、レス致します

 私も最近の山行で(大したものではありませんが)、行動中の計画的なカロリー補充と給水が、個人の能力を最大限に発揮する為にとても重要であることを実感しました。

 一方で、国際山岳連盟が推奨する十分なカロリーを摂取することは、比較的若い私でもなかなか困難です。たとえ、低山であっても行動が長時間に及ぶとカロリー収支をゼロに持っていくのは難しいでしょう。

 ”いわんや悪天候をや”

 行動食についての情報は不明ですが、二人前の弁当だけでは明らかに不十分でしょう。

 実は低体温でヒヤリとしたことがありますが、比較的早期にカロリー補充と給水を行い歩き続けることで切り抜けました。
 きちんとした装備により体温喪失を少しでも減らすことも大事なのですが、以前よりご指摘の通り、体温を維持するのは骨格筋の運動、そして運動するにはカロリーが必要。また末梢循環を維持するためにも脱水は避けなくてはいけない。これらは全て軽量化とは相反する事ですが、リスク回避の為には避けられないのではないかと考えます。
2012/5/18 15:23
朝ごはんと昼ごはんの摂取と、行動経過
 grandemolaさん、ランナーもやってるんですね。
 コメントありがとうございます。

>問題はその摂取した食料が吸収されてカロリーに変換するのに、若い20代で30分程。
私のような40代のシニア(※マラソンの世界では40歳超はシニア部門)2時間程というタイムラグがある


 食べたばかりの食料は、カロリー変換までにタイムラグがあるということですが、その間は、糖分や脂肪分など体に蓄えてきた分を、順次カロリーに変換しながら運動を維持し、つないで行くと考えればいいのですね。
 しかも、高齢者ほど、この消化・変換は時間がかかる。

 普通の街の生活でも、朝食べても、4、5時間もすれば腹がへる。
 山登りでは、糖分、脂肪分などを行動食として随時、摂っていくことが大事になりますね。


>今回の場合、小屋でお弁当を受け取った時点で食しておれば結果はあるいは変わったかも知れません。燃焼系や即エネルギー系のアミノ酸粉末等も水と一緒に飲んでいれば尚良かったかも知れません。


 今回の天候のもとでは、行動中のカロリー、水分補給は、ほんとに大切だったと思います。
 6人全員が摂れてないとは、想像できない。
 しかし、行動食についての発表はありません。

 今回の6人が、ヒュッテを5時半ごろに発つときに、受け取った2食分のお弁当は、おそらく朝と昼ではないかと思います。15時台に白馬山荘に到達する予定でしたから。
 この件、行動食とあわせ、全体は見えていません。
 夏タイム・プラス2時間なら、確かに15時台には山荘に達することができたはずでした。

 しかし、取り付きの大池まで約5時間かかった。(大池出発が11時ごろ)
 朝食休憩と、加えて何事かが、あったからかもしれません。
 小蓮華の登りで撮影された写真を見ると、山スキーでもないのに、6人の間隔がそれぞれ離れすぎているように見えるのも、気にかかっていました。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-187612.html

 この写真が写されたところから、行程にして2キロほどの小蓮華岳のすぐ下で、すでにザックを担げないメンバーが1人が出ています。
 時刻も13時30分。
 ここまでで、問題がすでに顕在化していたことになります。
2012/5/18 19:13
摂取すべき必要カロリーと、水の問題
 1955さん、私からも、初めましてです。
 ときどき訪問していただいてたようで、ありがとうございます。

>国際山岳連盟の推奨するだけのカロリーを摂取することは、比較的若い私でもなかなか困難であると思います。

 トムラウシ遭難の事故調査報告書でも、同じ見地で、この遭難パーティーが摂取すべきだった必要カロリーを、計算しています。
 体重76キロの男性Cさんの場合、3日目にトムラウシ温泉まで8時間で歩ききるための行動時間(8時間)のエネルギー消費量は、
 2300〜2700キロカロリー。
 さらに残る16時間の安静時の代謝量が、
 1040キロカロリー。
 必要カロリーは、合計3350〜3750キロカロリー程度。

 ところが、実際の食事を調べたところでは、1日分の食事で1000キロカロリー台の半ばのメンバーが大半で、2000キロカロリーを超えている人はほとんどいいようだ、とのことでした。

 トムラウシのツアー・パーティーは粗食だったことが、小屋の同宿のパーティーにも目撃されていますが、そこまでいかなくとも、必要なカロリー摂取はなかなかたいへんですね。

 おにぎりだと、1個200キロカロリーにしかなりません。

 水分摂取は、寒さを感じている条件では、テルモスに特別の飲み物を用意するなどしないと、体に入りませんね。
2012/5/18 19:17
RE: 検証 白馬岳低体温症遭難2)カロリー収支の角度から装備と行動食を見る
tanigawa様、こんばんは

もう少し続けさせて下さい(笑

 expedition(遠征登山)においては1日あたり4000kcal + 3Lの水の摂取を国際山岳連盟は奨めています。これだけのカロリーを歩きながら摂取するには”弁当”スタイルでは無理でしょう。

 私は経験も浅くまだ分からないことだらけではありますが、夏も冬も行動食の一部であるはずの食事を”弁当”スタイルで提供する小屋、受け取る登山者の双方が、”必要な熱源の確保”についてリスクを抱えているのかもしれません。

 条件の厳しい山域にある小屋では、登山者の年齢、性別、体格、予定コースから必要エネルギー量を推計した上で、
 ・そのカロリーに見合うチョコバー
 ・ビタミンやミネラル(+アミノ酸)などのサプリメントのセット

 上記セットを、弁当ではなく1日分の行動食セットとして提供する、あるいは登山者にアドバイスするといった科学的なアプローチが必要な時代なのかもしれません。小屋番やガイドは登山者の食事量の観察も欠かせないことになります。また、テン泊であれば、日数に応じた必要カロリーを概算して、持ち歩くか現地調達できることがテン泊の条件になります。また、悪天候で停滞することは、エネルギー消費を抑えるという点でも有用です。トムラウシの場合は摂取カロリーの観点からも、停滞することが正しい、ということになりますね。

 大変質の良い食事を提供する山小屋の存在や、ヤマレコでも冬山の夕食で美味しそうな料理をガッツリ食べているレコを散見します。スタイルはどうあれ、”必要なエネルギー源の確保”という点でとても大事なことなのだと認識を新たにしました。
2012/5/18 22:55
食料と摂取カロリーを検討することの大事さ
1955さんへ。

>1日あたり4000kcal + 3Lの水の摂取を国際山岳連盟は奨めています。これだけのカロリーを歩きながら摂取するには”弁当”スタイルでは無理でしょう。

 このデータは、海外のより本格的な登山と思われる方もおられると思います。とくに水分については、高度障害の対策が若干加味されている数値ですね。
しかし、トムラウシの遭難報告では、向かい風15m、登り、という条件では、通常の登山のさらに2倍近いカロリー摂取が必要(8時間の行動中の必要カロリーとして)、と検討しています。
 おにぎりに敢えて例えれば、10個ずつを朝、昼とっても、まだ足りない。
 ですから、

>トムラウシの場合は摂取カロリーの観点からも、停滞することが正しい、ということになりますね。

 まさにそうでした。
 しかし、あのパーティーは、あの日やってくる同じツアー会社の後続パーティーのために、避難小屋を空けるしかなかったのです。また、迎えのバスはトムラウシ温泉側へ、すでに回送中。
 ガイドに判断できる裁量は、実質的になかったといえます。

 今回のパーティーの場合、自前の行動食をどれだけ用意したかのデータはありません。
 しかし、パーティーとして、予測される天候、トムラウシを越える標高差のある行程などを考えた場合、不測の事態にそなえるカロリーは大丈夫なのか、という検討がリーダーには必要だったように思います。
 また、不足していることを確認したうえで、天候が悪化したり、行程が大きく遅れた場合には、あらかじめ大池までで引き返す確認なども、ミーティングしておくことも、あったかもしれません。
 これらは、検討の有無もふくめて、実情は推し量れません。
2012/5/19 7:49
遭難パーティーの装備のデータ
 以下に、遭難した6人パーティーの装備のデータをあげておきます。

 まず、装備全体の状況。


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北ア白馬岳遭難:回収ザックの中から冬山用ズボンなど発見
毎日新聞 2012年05月08日 20時19分

 長野県の北アルプス・白馬(しろうま)岳(2932メートル)近くで、北九州市の男性医師ら6人が死亡した遭難事故で、回収されたザックの中に薄手の羽毛ジャケットと防風機能のある冬山用ズボンが入っていたことが8日分かった。

回収した白馬村山岳遭難防止対策協会(遭対協)の降籏義道隊長は「冬山に耐えられる羽毛ジャケットではないが、自覚症状のないまま低体温症に陥り、吹雪に見舞われた時にはザックから取り出す余裕がなかったのでは」と推測している。

 遺留品は、遭難した当日の目的地・白馬(はくば)山荘の手前約2キロの地点にまとまってあり、遭対協の隊員2人が7日、4人分のザックと、下着などが詰まった大型のナイロン袋などを回収した。

 降籏隊長によると、四つのザックは50〜65リットルの容量で、それぞれに薄手の羽毛ジャケット、冬山用ズボン、保温機能のある登山用下着、予備の手袋、500ミリリットル入りの水3本などが入っていた。

 一番重いもので12キロ前後という。簡易コンロ二つのほか、6人がかぶっていたとみられるツェルト(簡易テント)1点と未使用のツェルトも回収した。

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NHK
白馬岳遭難 荷物の中に防寒着
5月8日 9時0分

北アルプスの白馬岳で、北九州市の男性6人のグループが死亡した事故で、現場から防寒着や簡易型のテントなどが回収されていたことが分かりました。

北アルプスの白馬岳で4日、北九州市から訪れた医師など63歳から78歳の男性6人のグループが行方不明となり、翌日見つかりましたが、全員が低体温症で死亡していました。
地元の白馬村山岳遭難防止対策協会は、7日、遺族の依頼を受けて現場の尾根から6人の荷物を回収しました。

搬送されたとき、6人の服装は、いずれもTシャツにジャンパー程度の軽装でしたが、山岳遭難防止対策協会によりますと、回収された荷物には薄手のダウンジャケットや簡易型のテント、それに手袋や毛糸の帽子なども含まれていました。

ダウンジャケットは、いずれもリュックサックの中に入っていましたが、簡易型テントは使った形跡があり、手袋や帽子は周辺に散らばっていたということです。
山岳遭難防止対策協会は「急な天候の変化で防寒着を着るタイミングを失い、簡易型テントも強風のためうまく使えなかったのではないか」と話しています。

/////////////////////

 ザックにはこのほかに、冬用下着や、冬用山ズボンを用意していたメンバーもいたとのこと。

 発見時の着衣の件は、下着は冬用ではなく、山シャツを着用。ベストを着ていたメンバーも確認されています。

 荷物の重量についてですが、トムラウシの遭難パーティーの場合、避難小屋泊まりで各自2泊3日分の食料をいれて、10〜14キロでした。

 今回は、食事付きの小屋泊まりで、最大で12キロ。
 
2012/5/19 8:00
低カロリーも問題ですが…?
 遭難パーティーの装備を見ると防寒の物もあったことを知り、遭難者らは動けなくなる瞬間まで危険性を感じていなかったのかな。それにしてもみんながみんな同程度の体力で、一人も危険を感じなかったのだろうか?
 自分のことに置き換えてみると行動中に呼び掛けに応えないとか、反応の鈍化が見えたら、何らかの異常を考えないと、パーティーを組んで登る意味がないように思うけど 、基本的に登山では、行動食が当然だと思うけど。
 ちなみに仲間と登る場合は、休憩のたびに飴玉を配ったり、ビスケットを勧めたり、おかげで昼食という感覚で休憩を取るということはほとんどありません。
2012/5/19 13:01
RE: 検証 白馬岳低体温症遭難2)カロリー収支の角度から装備と行動食を見る
体の熱産生は主に筋肉で、単位時間当たりの熱産生量には限界があり、年と共に衰えます。みぞれで衣服が濡れ、そこに強風の吹雪が吹付け満足な防寒防風対策をとらなければ、奪われる熱の方が多くなり低体温症に至るでしょう。

私は、食事を摂ったかどうかはあまり関係ないと思います。元々グリコーゲンの体内備蓄は普通の生活レベルで数時間分しかありません。普通の人で脂肪だと1ヶ月分以上の備蓄があります。

ちなみに私はここ2年間、行動食は食べていません。登山前と登山後にアミノバイタル1袋づつ飲んで、行動中は水かお茶、夏は塩分補給をします。(岩塩/味噌/マヨネーズ)+きゅうりなど。下界でも朝晩の2食のみです。
2012/5/19 14:14
判断する時間の余裕と、発症と
 tururinさん、初めまして。

>遭難者らは動けなくなる瞬間まで危険性を感じていなかったのかな。それにしてもみんながみんな同程度の体力で、一人も危険を感じなかったのだろうか?


 今度の白馬岳では、生存者がいないため情報がありませんが、福岡の家族への最後のSOSの連絡が17時30分少し前に行われています。
 おそらく、判断力や知覚がなくなる低体温症の進行は、かなりの時間差があったものと思われます。

 このシリーズの 1) に、目撃証言等から時系列を再現しています。
 一気に気象条件が急変したというのも、事実と違う。
 早いパーティーは、正午までに引き返しを行動に移しています。

 いっぺんに、手の打ちようがないスピードで、症状が全員に広がったというのも、またかなり違うと思います。
 13時台にすでに症状?が出たメンバーがいたことが、目撃されています。

 問題は、徐々に広がっていた危機にたいして、経験があるリーダー役(複数?)が、予防や注意をふくめて、どうであったかだと思います。
 警戒心と備えがどうだったか?

 雨具に山シャツだけで、ザックの装備を生かせなかったことも、様々考えさせられます。
 行動に困難を来たしだしてから(10人パーティーによる目撃)、さらに数百mを登り、最後のSOSまで、4時間があります。
2012/5/19 22:58
カロリー摂取は、予防・緩和役。着衣と相まってのもの
 wakaさんへ。

>私は、食事を摂ったかどうかはあまり関係ないと思います。元々グリコーゲンの体内備蓄は普通の生活レベルで数時間分しかありません。普通の人で脂肪だと1ヶ月分以上の備蓄があります。


 これまで議論されてきたことで、登山者が、急に大量のカロリーを要求される(奪われる)事態になっても、それを短時間に、あるいはリアルタイムで供給することは難しいことが、明らかになってきたと思います。

 一方で、悪天候のなかで、大量の熱をう奪われる、そのハンディを知り、低体温症に備えるためにも、出発前の食事でのカロリー補給や、即効性のある行動食、水分の補給が、緩和に役立つことも。

 退却やビバーク、安全な小屋への逃げ込みの際は、重要な備えになると思います。

 さらに、ここまででまだ議論になってこなかった下着を含めた服装の問題があります。
 真冬の山で、このようなケースで低体温症になるのは、むしろ少ないように私は思う。
 それは、始めから−15度、−20度の気温と強い風とに備えて、着衣と食事が根本的に違うからだと、私は思います。

 GWや6月、そして秋の山での備えは、その応用問題でもあると思いますが、冬と異なるのは濡れですね。
2012/5/19 22:59
補いきれないながらも、食べて生還したケース
 コメントでも、人間が用意でき、その場で使うことができるエネルギー源は、多くない、というご意見がありました。
 低体温症の実体験者でもある北海道の医師のサイトには、次のような解説もあります。

「人間が貯蔵できるグリコーゲン
􀂄 通常は摂取カロリーの60%
2000kcal×0.6=1600kcalしか
肝臓と筋肉に貯蔵できない。
⇒従って、繰り返し行動中に
摂取することが必要。」


 しかし、予防には限度があるなかでも、そのときに懸命に食べ、あるいは少しでも食べる努力を重ねて、大事を回避したり、生還した事例があります。
 いくつか紹介していきます。


◇2009年 トムラウシ遭難の生還者の証言から。
 (同遭難調査報告書から)

○私は持参したカロリーメイトや魚肉ソーセージ、きな粉棒をたべたり、アミノバイタルやアリナミンVなどを飲んだり、何分かおきに、何かを口に入れるようにしていました。

○「猛烈にお腹が空いたので食べた」「アメ玉1 個を食べただけで、こんなに違うのかと驚いた」

○「悪天時なので、身体を動かすために食べなければならないと判断して食べた」

○「(非常食として食べたもの)アミノバイタル3袋、これは天沼から日本庭園の間に立て続けに食べました。カロリーメイト2箱、全部たべました。」

○「トムラウシ公園の手前に来て、登山道脇の草むらに座り込んでビバークを覚悟した。生還した理由として、ビバーク地点にマットを敷いたことが断熱になり、体温を下げなかった、と語った。
 どこで着たのか特定できないが、雨具の下にフリースを重ね着したこと、時々チョコレートなどを食べていたこと、南沼を過ぎたころには雨風が止んでいたこと、ビバークで体力を温存できたこと、もともと体力があったこと、などが生還できた主な理由と思われる。」(これは報告書執筆メンバーの医師の記述)


◇トムラウシ遭難の同じ日に、旭岳から白雲小屋まで行動したヤマレコのユーザーの体験。

 「昨年7月16日のトムラウシ山での大量遭難が起きた日に,私は旭岳〜白雲岳避難小屋のコースを歩きました。
 強い風雨の中,旭岳を目指して歩き出したものの,7合目を過ぎたところでかつて経験したことのないような猛烈な風に危険を感じ,一旦避難小屋まで退避。しかしながら,天候は回復するとの予報が出ていたことから,少し風が収まったところで無謀にも再度スタートし,強風に吹き飛ばされそうになりながらも,なんとか白雲岳避難小屋まで歩き通しました。
 でも,本当は自重すべきだったと,今でも反省しています。・・・

・・・なんとか頑張ってここをやり過ごし,白雲岳避難小屋を目指しますが,徐々に体力が落ちていく感じがしました。手袋をしていても指がこごえて,うまく動きません。ゴアテックスの雨具を着ていても,霧状の雨が中の衣類を濡らします。
 途中の岩陰で休憩をとり,ウェストバッグに入れておいたアメ玉を頬張ってエネルギー補給です。ザックを開けて食料を食べるような余裕はありませんでした。
小屋に入ってザックをおろした途端,寒さと安堵感で全身が震えました。
 また,行動中は一度も震えを感じませんでした。ところが,避難小屋の中に入ってから2〜3分で体中が震え出しました。文字通り歯がガチガチと音をたてて震えました。
これは,行動が終了したことで発熱がなくなり,急激に体温が低下したためと考えています。
 私が思うに,低体温症への最も有効な対策は,常に行動し続け,発熱を維持することではないかと思います。
そこで重要なのは,行動を継続できるだけの体力と,発熱を維持できる量のカロリーの摂取です。
私の場合,登山途中で避難小屋に戻り,十分なカロリー摂取ができていたことが,その後の行動維持に寄与したと思います。」
2012/5/22 21:53
RE: 検証 白馬岳低体温症遭難2)カロリー収支の角度から装備と行動食を見る
tanigawa様、こんばんは

 国際山岳連盟医療部会のガイドラインでは、行動中のカロリー摂取スケジュールについての記述も(やや曖昧ですが)あります。体重75kgの私ですと、最初の30分に凡そ400kcal、以後4-6時間の間はは2時間ごとに(おそらく)400kcalの補給が必要です。これはexpeditionにおける基準のようですが、素人が自身の限界にチャレンジするような場合にも参考にして良いかと思います。

>低体温症への最も有効な対策は,常に行動し続け,発熱を維持

 無事に生還した今だからこそ白状しますが、3月の雲取山で本当に危ない目に遭いました。
 芋の木ドッケの巻き道で息子が行動不能に陥いりかけたのですが、その後あめ玉程度ですが行動食を与え続け、白湯を飲ませ、暖かい乾燥した装備への交換を行ったところ、山荘までの10時間余りを歩ききりました。新雪のラッセルであったために大人の歩行速度が落ちた結果、皮肉にも子どもには無理の無い移動速度となったことも大きかったと思います。
(冬も山行を継続していたので、歩いていれば寒くないことを息子は体で覚えていました。樹林帯であったことや3月で気温も-5度程度であったことも幸運でした)
 息子の意思表示はいつもギリギリなので、その山行以後は以前にも増してよく観察し、しつこいくらいに声をかけるようにしています。

tanigawa様の結論に敢えて付け加えさせていただくならば

 <”無理の無い移動速度で” 行動を持続させる>

こちらのほうがbetterかと考えますが、いかがでしょうか。
2012/5/23 2:53
RE: 検証 白馬岳低体温症遭難2)カロリー収支の角度から装備と行動食を見る
 1955さんへ。

> <”無理の無い移動速度で” 行動を持続させる>
こちらのほうがbetterかと考えますが、いかがでしょうか。

 おっしゃる通りと思いますが、大前提としては、生死にかかわる深刻な状況に遭遇しないように、また、それに準ずる場面でも、着衣やカロリー補給で、登山者が状況にたいして用意で負けない対応を先手先手ですすめることだと思います。

 気象条件の厳しさや登山者の側で基本的な防御体制が欠けているときは、行動をするのは事態を悪化させる場合があります。
 トムラウシがまさにそうでした。
ロックガーデンの手前でハイ松帯を生かしてビバークし、シェルパのいるヒサゴ沼に伝令を出していれば、犠牲者はかなり減ったと思います。
 しかし、彼らは人数分のテントがなかった。

 とくにパーティーを組んでいる場合は、この優位性がしばしば、個人差が出てきて、瓦解の糸口になる。

 その点で、紹介いただいた体験は、息子さんの体調との連携がうまくコントロールされていたケースと思います。

 
2012/5/23 6:50
装備面のデータ 関連するもの
 関連するものを、上げておきます。

◇やはりスコップは役立つ
 同じ5月4日、白馬岳に別ルートで登って、ビバークした男性(61歳)がいました。(「読売」5月6日)
 テントのそばに、高さ1・5mの雪の防風壁を作って、一晩しのいだとのこと。
 「5日未明まで吹雪が強かった」と話しています。
 この時期の稜線を、不安定な天候で行動するなら、やはり軽量スコップはビバークの必須装備になります。
2012/5/25 7:03
プロフィール画像
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