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とはいえ愛聴盤という程ではなく先日、ようやく購入して手元に置けるようになった。好い時代になったものである。
ジャズの世界では名盤の選にも載る夙に知られた盤である。
これを意識して初めて聞いたのは、函館のジャズ喫茶、J.B.ハウスの塚田さん(塚原？塚本？手塚？)が掛けたCDとして、、、いや正確には違うな、書いていて思い出してきた。
あの頃、今は僧侶となっている徹真さんに「縮緬雑魚(ちりめんじゃこ)亭」と名付けられた味わいある長屋に数人で間借りして暮らしていた時期に、ちょくちょく遊びに来てくれた恵迪時代の先輩でもあった石井健太さんという柔道部出の方がいた。確かギョーザ耳健太さんが知らせてくれたそのジャズ喫茶に連れ呉れて、マスターに教わって気に入ったと思しきディスクが件のリクエストしてくれた「flight to denmark」であった。
デンマークで撮影したらしきジャケットの、雪景色の雰囲気が聴いた当時の函館のソレと一致してまずは視覚的に「モッテイカレテ」しまった。
その対岸、海の向こうの「世界で最も雪の積もる都市」青森市に比べて函館は冬季にそうは積雪を見ない街で、どちらかといえば寒風が吹き抜ける乾いたその冬景色が、一時函館を好まない理由付けにもなっていた。耳健さんがこの店(と大西順子)を教えてくれたことを契機に、函館と云うこの一地方都市に愛着を覚え得るようになったことを、感謝せねばなるまい。
【なお、この方は「七帝柔道記」だか、雑誌文中だかに登場したことがあったそうで、それに関して著者の増田氏に文句を付けたことがあるとの情報を一昨日、別方面より得た】
また聴こえてくるその内容もピアノトリオフォーマットの情緒的演奏で、バリバリのフォービートではなく�ぁ�glad i met pat」といったワルツタイムに、じき春を迎えようとする北の国に希望を運んでくれる曲想として感じられた。そこで供されたコーヒーも美味しかった。
決して近くもなかったけれど、亀田港から青柳町まで自転車に乗り、また車を借りてその後度々訪れるようになったJ.B.ハウス。
連れ立って、ではなくひとりで。
聞いたところによれば、マスターの塚田さんは学生時代は京都に暮らしたようで、ジャズ喫茶で修業をした上で（「しあんくれーる」だったりして）地元函館に戻り、借金負って実家を改装してこの地にジャズ喫茶を開店した、とのことだった。通った当時には借金も完済し、21世紀の今も彼の地で営業中の模様。
夜はバーになり、バーボンを学生盛で鱈腹呑ませてくれた。千鳥足でどうやって帰ったかが、記憶に無い。あっ、あの距離を歩いて帰った記憶まで今、蘇ってきた。去年書いた話↓
https://www.yamareco.com/modules/diary/1946-detail-114240
デューク・ジョーダン、このデカイピアニストについても丁度一年前に書いている。
https://www.yamareco.com/modules/diary/1946-detail-113890
今でこそジャズ本には必ず掲載される奏者の一人ではあるが、これ程の表現者ですらロック台頭ジャズ不況期にはタクシードラゐバーとして口を糊する時期が有ったというから、何をか言わんや。アメリカでは食えんぞい、ならば欧州でということで録音されたのが件のCD、いやレコードである。
その後は日本は横濱の上不三雄(じょうふみつお)という心あるプロデューサーが録音の機会を多く与え、後年の代表作ともいえるレコードを生み出して、1993年頃にデュークが来函した際に私はそのマシュマロレコードの一作品を持参してサインを貰った。
バップピアニストの代表格のように語られるけれど、特徴的なジャズジャズしたタッチに無い。打鍵が強靭で、早く煌びやかにではなく指を高く明瞭に打つその運指はパウエル派とは一線を画し、このピアニスト独特の明晰で哀愁の籠ったメロディーを奏でて日本にも熱狂的ファンを多く生んだと聞く。かくいう私もその一人である。
また、この人の作ったスタンダード化した曲が幾つもあるが、どれもジャズの本流からちょっと離れたところに位置すると感じるのは私だけだろうか？ 楽理で説明の出来ないところが悲しいが、ベニー・ゴルソンが作曲したモノとは明らかに風合いが違う。元々の出自がクラシックにあるところと無関係ではなかろう。
あの握手したゴツくデカイ手と、デューク・ジョーダンがこれまで共演してきたティナ・ブルックスやハンク・モブレー、マイルズにブレイキー、スタン・ゲッツ、そしてあの天才アルトサックス奏者のチャーリー・パーカーとも繋がっているのだと今更ながらに思うと、それはそれは幸福な気持ちになれる。ビリビリビリーーーーーーッ！ 感電、バタリッ！
寒い季節にこれを聴くと、雪景色の函館の街を想い出す。
【追記；聴いた翌朝、この冬2度目の降雪をみた。】
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