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探した「山あり愛あり」が見つからず、こちらを手にした。
6年で大学を卒業し、出版社に就職したものの喧嘩で程なく辞め、その後深い考えもなく転職した先の「屠殺場(すぐに変換されないところが不気味)」で経験したアレヤコレヤを書き付けた自伝的エッセイとある。
経済でなく法学部を出たというのにエイヤでホワイトカラーと縁遠い世界に身を投じてしまうところに親近感を持つ。蛇足だが佐川氏はジャズピアニストのアキコ・グレースと同じ出身高校だぁよ。
屠殺とあるので、サバ登家服部文祥氏の著書によくみられる大型生物を殺めて「死」を考察する、といった文章を薄っすらと期待したものだったが、思い切り肩透かしを食った。
流れ作業で、それどころではない、と。ただ、P.87に「屠殺」や「屠畜」の語句解釈があって、そっとソレに接近する部分はある。
個人的に関心を持った点は、職能として皮剥きナイフ本来の扱いに開眼する件(P.109)と、それに纏わる切創(ケガ)で、私の従事した林業とも大いに重なる部分があって好意的に拝読した。
「どんなに機械化が進もうとも、屠殺が屠殺であることに変わりはない。屠殺は素晴らしい仕事である。」の「屠殺」をそのまま「林業」に置き換えたい思いである。
あとは、白土三平の「カムイ伝」にあったように、やはり屠殺と被差別部落の関連か。
著者の佐川氏については以前ちょっと書いたことがある。
https://www.yamareco.com/modules/diary/1946-detail-100531
氏は私の先輩にあたり、1989年3月卒とあるので1989年4月入学の私とはすれ違いである。恵迪寮でも。6年で卒業というのは同じだが、私の周辺には6年目4年で卒業という輩は多かった(家内も、だ)。
昨秋会った猟師、その服部氏から聞いたのだが、何かの文学賞授賞式だかで毛色の違った作家たちの中で二人浮きまくっていたということで共に波長合い、内容も近似して?意気投合したそうである。
職を手放したばかりの今の私には救われる感じのするところの大きい本だった。勤めた期間も氏が10年半で私はジャストの11年でもある。
しかしこの方は何時、芥川賞候補にズビズバ挙がるようなモノの書き方を獲得したのだろうか?
屠殺しがてら?
寮でさがわさんと同部屋だったとき、カムイ伝全巻読み回したね。
深い決心があって選んだ職業ではないとはこの本で書いていたけど、無知で軽い気持ちで入った世界ではないと思います。少なくともやり甲斐あるところと確信はしていたはず。
ぼくも読んでいました。
https://www.yamareco.com/modules/diary/826-detail-94188
カムイ外伝全巻回し読み、有用な情報に感謝します。
佐川氏に対しては、奥さんの両親に対して説明のために記録を書いていたという件があって、深い決心の点でそこが一番御本人に聞いてみたいポイントです。
佐川氏は1965年の早生まれなんでしょうか?
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