時間に追われず、ゆっくり歩いて行程を伸ばしていくところは、昔のワンダー・フォーゲルとスタイルは似ていますね。農家の離れのような小屋や民宿風の施設、小さな温泉宿など指定の宿泊場所をつないで、歩程を稼いで行きます。
今回歩いた主要ルートは、「北根室ランチウェイ」(全長71.4km、「ランチ」は牧畜地帯)。
全国にも幾つか、こういう旅のできるルートが設定されているそうです。
あとで調べて、そこに「信越ルート」も入っていると聞いて、そういう趣旨だったのかと、初めて知りました。これは、おもしろい歩き方と思います。
この北根室の「ランチウェイ」には、山はまったく初心者の中国出身のリー・チェンさんと、山に登りだしたけれどまだ年季が浅そうな大森千歳さんが挑戦。取材は2012年の11月下旬ですから、気温は冬、雪が比較的少なめの道東とはいえ、景色も冬。凍り出した沢も渡渉する。
そんななかを2人は、牧場を抜け、新雪の丘陵地帯や山の尾根を上り下りし、湖をつないで、歩き続けます。1日13キロ歩いたり、無人の山小屋で薪ストーブに火をつけ、わびしい夕食をとったり。開拓者が語る牧場暮らしや、温泉での人びととの出会いもおもしろい。
歩き通した20代の二人は、人生も模索中の様子ですが、頑張ってゆこうという気持ちも培われたロングトレイルだったように思いました。
また私自身は、山に包まれながら、ゆっくりとした行程を楽しむ良さを思い出させてもらいました。
山登りは、幕末から明治以降の日本の場合も、歩くことが大きな部分を占めてきたと思います。中部山岳地帯や東北、北海道への道に分け入った、幕末の異人たちも、このスタイルでした。それに刺激された日本の若者たちも、そうでした。
自分の山の思い出でも、稜線をたどったときのことよりも、登山口までの長い林道歩きや、やっとたどり着いたバス停で最終バスに乗りはぐれた体験、予定外で夜をすごすことになった傷んだ山小屋のことなどが、生き生きと思い起こすことがあります。そういう場面では、いろいろなことを考えるからでしょうか。山は遠かった。帰り道は難儀だった。でも、それらを含めて、山の旅だった。時間があった若い時期ほど、そうでした。
憧れだった漂泊、彷徨などという言葉が頭を過りました。
効率が良すぎ、便利すぎる山登りは、良い面もありますが、体験としては薄いこともある。またそういう面もあるから、山はいろいろな登り方ができて、奥が深い。
この番組を見て、北海道の山のアプローチを、またいつか楽しみたいと思い、これからの登り方も考え始めました。
いくつか設定されているというのは、モデルコースなんでしょうか。参考にはなりますが、効率よく便利に整備されて標識がたくさんできてガイドブックができて関連商品が増えて人がぞろぞろ歩いたら、また、自由でなくなりそうですね。
でも、長距離歩きのジャンル、とても共感できます。いかに車道を歩かずに行けるかが鍵ですね。ヤマレコにも少数派だけど、記録ありますね。とても楽しそうです。
yoneyamaさん、日本の人口密度と開発の度合いのもとでは、「ロングトレイル」と言っても、人工物や車道との交錯は避けがたい。そこで広大な山林・原野が残る道東という条件を生かして、酪農地帯や一部観光地も組み込みながら、地元の実情に合ったトレイルを生みだしたのが、このランチ・ウェイのようです。
また、酪農・畑作地帯では、一定の頻度で、ところかまわず農地を歩かれても支障がでるので、地元の協力と参加という形で、一定数の利用でも支障がないルートを設定し、誘導している様子です。
北根室ランチ・ウェイ 71・4キロ
http://www.kiraway.net/05howtowalk.html
ですから、yoneyamaさんの言うように
>いかに車道を歩かずに行けるか
という指針で、既存のルートをベースにしながらももっと自然の中に入り込む形で、あるいは林道や山道を基本にして、自分なりのトレースを開いてゆくのも、ありうると思います。
まだ北海道が人気がなかった1960年前後に、これを実施した「初めての旅」(本多勝一)など、ひと昔、ふた昔前は、より野性的な旅が北海道でも可能でした。
個人のレベルで山を大きく取り入れるなら、まだ、それができますね。
今回の番組では、11月ということもあってテント泊はなしでしたが、このルート上にもキャンプ場は多く、また、山へ分け入れば、北海道は林道も山道もスケールが大きいので、いろんな泊まり方ができそうです。
ヤマレコでもマイカーを使わない山登りを実践している人がいる。yoneyamaさんも家や麓から自分のルートを見いだしながらの記録がいくつもありますね。 私も、私なりにこれからの登り方の一つの方向として考えていく気になりました。
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