最寄の駅は、磐越線・日出谷駅。
林道が整備された現在も、小屋まで2時間もある場所に車止めがあり、アプローチに汗をかかされます。私が1974年に入ったときは、林道そのものが途中までしかなく、そこからは枝沢や土石流跡を越えるごとにアップダウンのある長い登山道でした。
現在は、林道の橋が途中で落ちたりしているらしい。
汗みどろで行き着いたブナの美林のなかにひっそりと建っているのが湯ノ島小屋です。
湯ノ島の名前は、そばに温泉が湧いて、天然風呂があったからでした。
土砂崩れなどのためか、70年代には、とっくに埋まり、地名と地図記号にだけ温泉マークが残されました。
私にとってこの小屋は、一度しか利用していないのに、思い出深い山小屋です。
湯ノ島小屋は、高さ1mほどの石積みで周囲を四角に囲い、その石積みの上に板壁と屋根掛けがしてありました。
屋根はトタン葺き。
内部は、幅4m、奥行き5mほど。
入り口の木戸から入ると、2mほどの奥行きがある土間がありました。
窓はなし。暗く陰鬱だし、悪い虫でもいると厄介なため、木戸を開けて、中に風を入れて、床部分にツェルトを張って泊まりました。
気に入ったのは周囲の様子です。
小屋の裏手に、清冽な湧き水を引き込んでいて、心地よい水音が伝わってきます。
開放した入り口からは、まるで映画の画面を見るように、前方に向かって穏やかに傾斜する若いブナの森が眺められます。
私たちは、戸を開け放って眠りました。
翌朝、暗いうちに目を覚ますと、小屋の前のブナ林が次第に明るみを増し、梢から見透かす空には雲がありませんでした。
急いで身づくろいをして出発したのは良かったのですが、以前の増水か雪崩かで、渡渉する2つの沢にはどちらも橋が消失していました。
とくに2つめのアシ沢は怖いところで、朝一番から肝を冷やすことになりました。
そのときの記録。
「最初のは楽だったが、二番めは、いやな沢だった。遭難者の碑をすぎて、その沢に出ると、両岸は岩に囲まれている。沢幅は1・5メートルばかりだが、「とい状」の岩の間を水がものすごい勢いで流れ下っていて、その数メートル先で流れは落下し、淵が渦をまいている。水流を飛び越え、うまく対岸の岩場に着地しないと、体ごと深い淵に引き込まれるだろう。その下も、きっと滝か淵だ。幅はこんなに狭い沢なのに、失敗すれば体を濡らすくらいではおいつかない、悲惨な結果になりそう。まずザックを対岸にエイッと放り投げる。意を決して、ジャンプ一発。やった。緊張感がすっと引き、体から力が抜ける。わずかでも増水すれば、着地点の岩場も水に洗われるに違いない。この沢は、増水したら、とても越えられそうにない。」
退路を断たれるようにして、私たちはオンべ松尾根の急登に挑みました。
湯ノ島小屋は、私たちが1974年に使用したものが、初代の小屋でした。
この初代の小屋がさらに荒廃したあとに、1996年、場所をオウデ沢右岸に移して、2代目の小屋が建てられました。
ところが、その96年の最初の冬に小屋は雪崩にあい、1階部分が完全に倒壊し、流され、2階部分が飛ばされるなど、壊滅的な被害を受けました。
この雪崩は、雪氷学会で「新しい避難小屋の2階が33m意外な方向へ飛ばされた」と報告されたほど、独特で破壊力に富む雪崩でした。
(1997年度日本雪氷学会全国大会 http://avalanche.shinshu-u.ac.jp/book2.html)
1997年、流された一階部分を撤去し、飛ばされた2階部分を元の位置に仮復旧する工事が完了。小屋に併設されていたトイレも修復されました。
しかし、建設場所に、やはり雪崩の不安があったのでしょう。
2000年までに、仮復旧ではなく、「3代目」の湯ノ島小屋が建て直されました。
場所は、初代が建っていた、あの河岸段丘の高みで、ブナ美林を俯瞰できる場所。姿はすっかり現代的な小屋になりました。
その後は雪崩にあわず、順調に年を重ねている様子です。
写真は、オンべ松尾根の急登から右手の実川源頭の雪渓。
初代の湯ノ島小屋の写真(1970年代半ば)
http://img2.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/ba/66/nightlyrains/folder/1446630/img_1446630_40397625_7?1156907519
3代目の湯ノ島小屋の写真
http://yamadon.net/yam/img_yama/img/0808/m0808011933708_m.jpg
私の記録。飯豊連峰縦走 大日岳から 門内岳(1974年8月3日〜7日)
http://homepage2.nifty.com/kinokoyama/touhoku/iide1974.8.htm
湯ノ島小屋(私のサイト)
http://trace.kinokoyama.net/yamagoya/yunosima-koya.htm
きびしいところに行かれてますね。
明日、久しぶりにお会い出来るのを楽しみにしています。
wakaさん、いよいよ今夜、再会ですね。
とっても楽しみです。
ちょっと早めに到着されるのかな。
湯ノ島小屋から大日岳へのルートは、暑さにもやられたのですけれど、いま思えば塩分不足のまま水だけ飲み続けたのも、ばてた原因と思います。
6年前の3月下旬に、登山口の日出谷駅までは再訪しました。林道はもちろん残雪の下。御西岳から本山、大日岳までの雪解け水をすべて集めて、実川が膨大な水量で阿賀野川に流れ込んでいました。
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