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(資料全文は、こちらから見ることができます。英文。)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004701596
実験では、ブナ林の斜面に実入りのいいブナの種子と、あまり実入りがよくないブナの種子とを、正確な数を勘定してばらまきました。転げ落ちないようにネットを支えにして。
すると、日本海側の気候に属し早い時期から根雪におおわれるブナ平のブナの実が2、3割しかネズミたちの食害されなかったのに、三頭山では実入りの良いブナの実は全滅。実入りが悪いものも半分しか残っていませんでした。
積雪量と、ブナの実の生き残りとの間には、深い関係があったのです。
同じ実験結果は、下記でも紹介されています。
http://www.kuromatsunai.com/fagus/
ネズミたちの食害の規模は、すさまじい。
前回、太平洋側の三頭山のブナ林は、気温の上昇と乾燥とによって、世代更新が途絶え、死滅に向かってすすんでいると報告しました。
雪が積もらない山地のブナは、乾燥と夏の高温だけでなく、冬に根雪がないことによっても、きびしい生き残りの条件にさらされていることになります。 近年の東北・北陸地方の根雪の遅れは、雪国のブナ林の更新にも、年ごとに圧迫になっていると想像します。
動物と積雪量とブナの更新のことでは、ウサギも意外な形で影響していることを知りました。
(資料は、「ブナの森を楽しむ」西口親雄、岩波新書1996年)
それによると、秋と冬を越えて春にようやく芽生えたブナの芽(実生 みしょう)のうち、笹薮などを逃れて日差しが差し込む幸運な条件に育った幼苗だけが、さらに背丈を伸ばすことができます。発芽できたもののうち、わずか1パーセント前後。
ところが、背丈が2メートルに達するまでが、次の難関。冬場に餌が限られる野ウサギが、枝先を食べてしまうそうです。「兔害」(とがい)という林業用語もあるそうな。
雪の上を行動する野ウサギがブナの幼木を食べるのは、背丈が80センチから130センチくらいが中心だとのこと。
山の積雪が少なかったり、積もるのが遅れると、場所によっては冬中、雪の上に枝が出ているなんてことにもなりかねないと思いました。
ブナ林の1回目で白神山地の害虫と温暖化の証言を紹介しました。ブナの種子を食害する昆虫は27種おり、年によっては9割もの種子が発芽できない状態になるとのことです。
(http://www.kuromatsunai.com/fagus/)
野ネズミと、野ウサギ、そして害虫となる虫たち。気候の変化にともない、森の樹木と動物たちの関係も変わって行きます。その途上で、ブナの森はいまを生きているのを感じます。
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