キノコに含まれる化学物質の詳細な分析や、中毒事例のデータの収集がすすめられてきて、身近なキノコの想像以上に怖い面が、明らかになってきました。
でも、食用とされてきたキノコで、これまで中毒事例が大きな問題にならなかったのは、なぜか? 多くは加熱したり、湯がいたりすることで、毒がそのまま体内に入ることが稀れだったからでした。そのなかでも、中毒事例の情報が収集されて、一部では加熱不足などから、軽度の中毒は起こってきたことが明らかになっています。
写真1枚めは、オシロイシメジ。よく食べられてきましたが、胃腸の中毒を起こすことや、変異原性の物質をふくむことがわかってきました。
写真2枚目は、ナラタケ。北日本で良く食べられてきた代表的なキノコです。最近、4、5種にくわしく分類され、そのなかには加熱が不十分だと胃腸を壊す種類があることが分かってきました。
こうなると、キノコの大半は、人間などにとって有害な毒物が含まれると考えてしまっても、まちがいではなくなります。実際に、いま判明している食用になるキノコのうち、毒性分が検出されていないものは、わずか数十種にまで、減ってきています。
全体は5000種ともいわれています。判明している完全無毒な食用キノコは、ごくわずかなのかもしれません。
問題は、従来の経験だけで野生のキノコを採集している方々が、これらの、新しいキノコについての情報や動向を知らないままでいることです。
図鑑も、うんと古いものに頼っては、不意打ちをくらいかねません。
で、本題です。
不思議なのは、なぜキノコと毒性分は、これほど切り離しがたいのか? ということです。
キノコの毒は、なぜキノコにあるのか?
研究の最中の問題なのだと思いますが、1つは、キノコは生きるための栄養を、他の動植物から吸収する生活をしていることと、関係があるらしい。
栄養を奪う相手は、植物の木や草だったり、木の内部にいる微生物だったり、死んだ虫や動物の排泄物だったりします。
キノコ(本体の菌糸)は、体からさまざまな化学物質を出して、周囲のそれらの生物とその死骸を分解し、得た養分を吸収している。
キノコの毒のうち典型的なものに、生体の細胞を壊す細胞毒というものがあります。食べた人の胃も、細胞がやられる。テングタケの仲間のように、肝臓の細胞を激しく壊す毒物もある。
もしかしたら、神経毒をもつキノコは、近寄ってきた小虫や微生物にその毒を接触させて、動けなくしているのかも。
2つめの毒の目的は、キノコがその毒で身を守っているということです。
確かに、牧草地などでは、牛が食わない雑草だけが繁茂しちゃう例があります。
最近死者がでたカエンタケの場合は、食べると死をまぬかれないだけでなく、触った指もただれるほどの、強い毒性があります。
毒をもって、捕食者を撃退する。
私は、キノコは、生物多様性の基盤になって、地球の自然をささえている存在と感じています。しかし、森の分解・更新役としてのその実際の姿は、なかなかおぞましい面さえあるように感じます。
相手は10億年以上も前に地球に登場して、現在の環境を生み出しつつ、生き抜いてきた、つわものです。
名前を確定できないキノコに接するときは、ゆめゆめ、ご用心を。
(この記述は、次の文献を参考にしました。
「日本の毒きのこ」長沢栄史 監修、学研、
「特別展オフィシャルガイドブック 菌類のふしぎ」国立科学博物館)
オシロイシメジ
新潟でよく見かけます
ウチの両親が大好きなキノコです…
本によって食用、毒などバラバラだったので
最近毒性が分かってきたものなんだろうな…
って思っていました
スギヒラタケもオシロイシメジも
自己責任で食べてもいいけど、
お客さんには絶対出すなといつも言っています
karamomoさん、新潟もキノコと地域の生活が密着したところですから、従来のキノコの安全性が再検討されると、秋の楽しみや食文化にまで、影響が出てきますよね。
ご両親が大好きな2種。
スギヒラタケは、私もずっと食べてきました。こちらは中毒事例のデータ集中、検討がすすんで、実は腎機能が低下する疾病をかかえた人を中心に、急性脳症で死亡する事件が続いてきたことが、判明しました。
医師、保健所のとりくみの反映ですね。
こんな美しい、身近なキノコに、意外な一面を見ることになりました。
オシロイシメジは、よく湯がいて、加熱と煮こぼしをすれば大丈夫なようです。北海道でも、とても人気が高いキノコです。
ご両親には、karamomoさんがしっかりアドバイスされているようですから、うまく付き合ってくださると思います。
興味深い研究結果ですね。
無毒と言われてきたキノコは本当に無毒なのだとばかり。
実はそうではないモノも多いとは・・・
ちょっとビックリしました
神経毒に限らず、強毒性のキノコは皆、自分の養分確保のための毒のように思えますね。
食べられても全てが消化されてしまうわけではなく、菌糸が残っていれば、毒で死んだ動物をそのまま宿主として生えてくることも出来るわけですから。
しかも、元生えていた場所から少なからず移動も出来る・・・巧みな戦略ですよね。
キノコ恐るべしですね
tanigawaさん、こんばんわ
今までキノコを見分けられる人をすごいなぁと思ってましたし、自分もいつかと思ってましたが・・・
もうキノコには手を出しません ><;
tanigawaさん おはようございます
きのこは面白いですね
栄養を吸収して毒をだしているなんて、ナウシカのヒソクサリを思い出してしまいました
なぜきのこに 毒のあるものとないものがあるか?
夢野久作は きのこ会議 という短編でお話にしてます
ネットでも探すと読めます
幻想小説が好きな方はどうぞ
tszkさん、なるほど、生息域の拡大という目的も考えられますね。
>食べられても全てが消化されてしまうわけではなく、菌糸が残っていれば、毒で死んだ動物をそのまま宿主として生えてくることも出来るわけですから。
しかも、元生えていた場所から少なからず移動も出来る・・・巧みな戦略ですよね。
下痢で体外に出される前に、あるいは、その動物が死亡する前に、食べた動物は移動しますからね。人間もですが、毒に耐性がある虫たちも、同じですね。
胞子は、動物の体内でも生き残るものが多いとすると、捕食者が死ななくとも、腹具合から野糞を繰り返してくれるだけでも、キノコには「恩の字」かも。
mic726さん。
>もうキノコには手を出しません ><;
ああ、そこまで敏感に受け止めていただくのが、趣旨ではないのですが、でも、きちんとした情報を得ることなしに、個人的・地域的体験の範囲でキノコに向かう人が、圧倒的に多いことは、上に紹介した資料の研究者たちも嘆いていることです。
大事なことが、ちっとも伝わらず、キノコ狩りの楽しさだけが蔓延していると。
経験主義という点でも、5000年前のミイラ、アルプスの「アイスマン」は、呪術の品としてカンバタケの装飾品を身に着け、また、おそらく火起こしの材料としてツリガネタケの乾燥品を携行していました。
キノコに含まれる毒と化合物は、薬として、人間には長く用いられてもきました。
くらべて現代人は、自然の奥深さ、自然への畏れの気持ちを、かなり失ってきているのだと思います。
民俗学的なキノコの知識も、十分に伝承されてこなかったように思います。
Coffeeさんへ。
>栄養を吸収して毒をだしているなんて、ナウシカのヒソクサリを思い出してしまいました
温暖化問題と、生物多様性の問題は、登山者にとってもとても大事な問題と考えています。
花に目は行くけど、キノコはへんなものを見たとされ、思われる。
花の写真はきれいに撮っても、キノコは暗かろうが手ぶれであろうが、ときにぞんざいに扱われる。
登山者によっては、蹴飛ばして歩く。
ナウシカは、人間のそういうあり方に、目を向けているのだと思います。
姿や全貌がいちがいにはとらえられない、キノコと菌類の世界。自然の中の人間を、考え直すべき時代に、キノコもまた見直されてきているということでしょうか。
イグチ系の現代迷信をご指摘頂きながら未だ毒されていて、当地でリコボウとかジコボウと言われるハナイグチに似たキノコを十把ひとからげ的に食べています。自分が食べるだけならまだしも、間違って紹介してしまったようで、訂正はしましたが大変なことをしたと反省しています。
林業試験場の研究員さんが、「現時点で無害とされるキノコは『現時点まで無害であったキノコ』に過ぎず、今後も無害であるかどうかは誰にも分からない」と言っていたのを思い出します。
その人はこうも言っていました。『キノコ通と言われている人であってもその人の顔色をよく見て下さい。キノコの毒には遅効性のものもあって長年の蓄積で肝臓をやられている場合もあり、そう言う人は不健康な顔色をしている』
即効性のものでも気づかない程度の症状は見逃されていることでしょうから、遅効性となると因果関係の突き止めようがないでしょうね。
nobouさんへ
>「現時点で無害とされるキノコは『現時点まで無害であったキノコ』に過ぎず、今後も無害であるかどうかは誰にも分からない」
いいえてますね。
ともかく分類、命名じたいが、まだ入り口で右往左往しているのが、キノコ学の現状ですから。
キノコ好きの人は、1、2度当たったことがあるというのもよく言われます。
私はかなり臆病なのと、野生のキノコだからとなんでも手をださず、おいしいものをその日に食べきれるだけ、摘むようんしています。
あとは、もっぱら眺めて、写して、調べて楽しむ、ですね。
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